長野県北部,信濃町池尻川低地におけるAT火山灰降下期直前の古植生

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タイトル別名
  • Reconstruction of paleovegetation in the period just before the AT tephra fall event at Ikejiri-gawa Hollow, Shinano town, northern Nagano prefecture, central Japan
  • ナガノケン ホクブ,シナノマチチジリガワ テイチ ニ オケル AT カザンバイ コウカキ チョクゼン ノ コショクセイ

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抄録

長野県北部,野尻湖西方の池尻川低地88IKA-C-8グッリッドで採取された試料の花粉分析を行い,AT火山灰降下期直前における古植生を検討し,以下を明らかにした.周囲の山地の古植生は一様ではなく,山腹から山頂部にはマツ属単維管束亜属,ツガ属,トウヒ属,モミ属などのマツ科針葉樹よりなる亜寒帯林が,山麓部にはブナ属,コナラ亜属などの落葉広葉樹とマツ属単維管束亜属,ツガ属,トウヒ属との針広混交林が,両者の境界には,カバノキ属を主とする林が移行帯として成立していた.花粉化石群集は下位より88IKA-C-8-V〜1帯の5帯に区分した。V帯からIV帯にかけては古気候の相対的な温和・湿潤化と植生帯の上昇を,III帯からI帯へは,最終氷期最寒冷期に向かう寒冷・乾燥化と植生帯の下降を示している.この間,周辺の低地では,カヤツリグサ科とイネ科との湿った草地群落,カラマツソウ属とキク科の乾いた草地群落,ヤチヤナギ群落やハンノキ湿地林,ヤナギ群落などが混在する湿原が広がり,この状況はV〜I帯の全堆積期を通じて維持された.これまで冷温帯落葉広葉樹林とされていたQuercus-Fagus帯Quercus-Fagus亜帯の古植生は,マツ属単維管束亜属,ツガ属,トウヒ属などのマツ科針葉樹と冷温帯落葉広葉樹との針広混交林であったと考えられる.

収録刊行物

  • 地球科学

    地球科学 66 (4), 129-139, 2012

    地学団体研究会

参考文献 (30)*注記

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