植物学という言葉

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タイトル別名
  • The History of the Term "Shokubutsu-gaku" (Botany)
  • ショクブツガク ト イウ コトバ

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抄録

「植物学」という語は咸豊八年(1858)に中国で出版された『植物学』で初めて用いられ、それが日本に伝わって、それまで用いられてきた宇田川榕庵の造語である「植学」に取って代わったとされている。しかし、最近、杉本つとむ氏により榕庵の書簡(文政六年1823頃のもの)に「西洋植物学家」とあることが指摘された。ただ、現在確認されているのはその一例だけであり、ウエモノノ学と訓む可能性を指摘する者もある。しかし、廣瀬元恭の『理学提要』(嘉永五年1852成立)にも「植物学」の語が見られ、版本では音読符が付けられている。「植物学」は「植学」という語を用いる以前に西洋植物学を本草学と区別するために榕庵が初めて用いたものと思われる。現在行われている通説は、明治八年(1875)に『植物学』の邦訳『植物学和解』および抄訳『植物学抄訳』が刊行され、広く流布した結果、「植物学」が『植物学』と結びつき、それに伴って「植学」が『植学啓原』と結びついたことによって生じたものであろう。

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