原風景研究の臨床心理学への示唆

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タイトル別名
  • Studies of initially imprinted scenery : Implications for clinical psychology

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抄録

原風景の先行研究をレビューして、原風景とは何かを明確にした。原風景は、子どもの頃の生活空間(場所)の心のイメージである。強い情動を伴った出来事・遊びが、それらが起こった場所の風景とともに脳裡に焼き付いて原イメージができる。原イメージとその生活空間での様々な経験の記憶が結びついて原風景が形成される。原風景は子ども時代の他に感受性の強い青年期にも形成される。原風景の想起における自己との出会いは、いくつかの効果をもたらす。原風景の想起は、「心の故郷」として機能し、安らぎと活力を与えてくれる。原風景は自分の原点であるという気づきをもたらす。原風景は、作家、芸術家の創造の源泉である。 考察で、原風景は人格の形成に関与することを論じた。原風景は、場所の心のイメージの一種である。原風景研究は、不安神経症者やアルコール依存症者の心理療法と健康な人のグループワークで場所の心のイメージが利用できることを示唆している。場所の心のイメージの利用について、次の3点を述べた。(1)原風景は「心の故郷」として機能し、クライエントを支えることにより、治癒に関与する。(2)アルコール依存症者の心理的ストレスを低減する心理療法として、場所の心のイメージを利用する面接が有効である。(3)原風景描画・語り法は、本人に原風景は内的な資源であることを自覚させるとともにグループへの参加者たちに相互理解と共感と人間への信頼感をもたらす。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1573105977748151680
  • NII論文ID
    110009536620
  • NII書誌ID
    AA12209029
  • ISSN
    18813097
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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