山崎 佐「歯科医師の診療能力の範囲」(昭和13年)について

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  • The Limits of a Dentist's Abilities (1938) by Tasuku Yamazaki

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抄録

"昭和11年,歯科医師が行った静脈注射が医師法違反に問われた,いわゆる「クロールカルシウム静脈注射」事件がある.第二審において歯科医師側の弁護を担当した山崎佐「歯科医師の診療能力の範囲」(昭和13年)からその内容について紹介した.本文の総文字数は約26,100文字におよぶものであり,論旨の概要は以下のとおりである. 1.医事法規の発達消長は医学の進歩に重大な影響を与えることから,医事法規も変化しなければならない. 2.適正な法規の解釈によって医学の実地応用ができる. 3.医師の診療範囲が無制限で歯科医師の診療範囲は制限があるという間違った解釈が存在する. 4.医事法規の解釈と取扱によって,医療の進歩とその適否を決める. 5.歯科医師は全身に関する知識がない,口腔以外の治療は許されない,静脈注射は危険だからという理由から歯科医療行為に含まれないというのは全くの誤解と理解不足である.当時において,内服薬の処方は歯科医業として歯科医師に認められている. 6.クロールカルシウムに関しては国家試験問題でもある. 7.歯科医師免許を有する者が行う歯科医業行為に静脈注射は含まれる. 8.歯科医業行為は常に変化して,その時代における解釈によって変動するものである. 歯科医師はただ歯牙口中の,局所からのみ治療すべきものであるという当時の行政,司法の考え方を根底から覆し,その後の歯科医師の診療行為の解釈にはかり知れない好影響を与えた."

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参考文献 (14)*注記

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