食育とシンボル再編の社会的力学 : 「スローフード」と政策形成過程

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タイトル別名
  • Shokuiku Policy and the Reconstruction of Symbols : "Slow Food" and the Policy Formation Process
  • ショクイク ト シンボル サイヘン ノ シャカイテキ リキガク スローフード ト セイサク ケイセイ カテイ

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抄録

食育基本法が2005年に成立し、食育推進は国民の責務であるとされた。基本法で規定された食育の内容は広範なものであり、健康の増進や食料自給率の向上、食の安心・安全の確保といった課題に加え、感謝の念を育むといった側面が強調されている。このように食育には規範的傾向があるため、存在意義が自明視され、その政策形成過程はあまり問い直されることがなかった。そこで、第1の課題として、食育政策のスタート地点にさかのぼり、当初の目的はBSE問題への対処であったこと、その後、食育政策は順を追って範囲を拡大してきたことを明らかにする。第2に、食育政策の普及過程で、シンボル再編が行われたことに注目する。地産地消の推進による「顔の見える関係」構築がBSE問題対策のひとつとして有効視され、当時すでに流行のシンボルであった「スローフード」が地産地消と等号で結ばれることになった。食育政策は既存のシンボルをこのように資源として活用することで、「食育」という当時は認知度の低かった言葉を新たなシンボルとして構築するとともに、人的資源等を動員することに役立ててきた。ここでは、「スローフード」という資源の供給回路を記述するために、文化理論という分析枠組を用いる。これにより、シンボルを媒介とした集団間の相互作用―意図的な、あるいは意図せざる―を俯瞰的に描くことができる。本稿での検討により、シンボルをめぐる集合行為のダイナミクスを示唆する。

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