規範意識の行動志向に関する一考察 : ケアの倫理を中心として―

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道徳性の発達については、J.ピアジェによる知的発達としての道徳性の発達理論があるが、その知的発達理論を発展させたのがL.コールパーグである。その弟子であるC.ギリガンは、L.コールパーグの発達理論を男性中心の発達理論であると批判した。C.ギリガンが、女性特有の立場から道徳性の認知発達の過程として人間関係(関係性)に着目したことは注目すべきことである。しかし、J.ピアジェもL.コールパーグもC.ギリガンも道徳性を知的発達の側面からのみアプローチしている。道徳性の発達を知的発達からのみ捉えていくことには限界があると考えている。道徳性の認知発達の基礎になっている心の基盤形成「思いやり体験」に目を向ける必要があると考えている。C.ギリガンは男女の性差に着目して「ケアの倫理」を打ち出している。C.ギリガンは男女の規範意識の違いを性差による認知発達の違いとして、L.コールバーグによる男性優位の認知発達理論を人間関係を最優先する女性の立場から批判した。認知発達という知性の論理の過程で、人間関係(関係性)に着目したことには大きな意義がある。しかし、道徳性の発達を認知発達理論としての知的側面からのみアプローチしていくことには限界があると考えている。道徳性の発達に男女の性差の違いが在るのだろうか。人間を取り巻く環境や時代背景によって、男女の規範意識に違いが生まれることはあっても、本質的に大きな差はないと考えている。「ケアの倫理」における「人間関係の葛藤」の根底には、心の基盤形成における「思いやり体験」が大きく作用していると考えている。認知発達という知性の論理の前提となる、心の基盤形成における「思いやり体験」に焦点を当てることが重要である。心の基盤形成における「思いやり体験」の深さが規範意識の行動志向への「意欲」を生み出し、他者理解の基礎としての自己理解を深めていく。人間は規範意識形成において、他者とかかわる体験の中で他者意識を優先させるのか、自己意識を優先させるのかという葛藤場面に直面する。その葛藤を乗り越え、人間関係(関係性)を構築していくのであるが、その根底には、心の基盤である「思いやり体験」があると考えている。

道徳性の発達

「ケアの倫理」

人間関係(関係性)

心の基盤形成「思いやり体験」

意欲(主体性)

identifier:KS000400007439

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