小川培地上での抗酸菌の嫌気的培養環境への適応とその性状

  • 有働 武三
    産業医科大学 産業保健学部 第2生体情報学

書誌事項

タイトル別名
  • Adaptation of Mycobacteria on Solid, Egg-Based Media to Anaerobic Conditions and Characterization of Their Diagnostic Phenotypes

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抄録

結核菌Mycobacterium tuberculosisは経気道感染後に肺胞マクロファージに取り込まれたのち,そこに形成される低酸素環境の肉芽腫病巣内で非増殖性の休眠状態で数十年にわたって生き続けることが知られている.液体培地を用いて確立されたin vitro休眠モデルを通じてそのような持続感染を可能にする分子機構も明らかにされつつある.本研究は液体培地に代えて加熱凝固卵を基調とした小川培地上での抗酸菌標準菌株を中心とした低酸素環境への適応化を試みた.直接的な嫌気培養では10週の培養期間を通じて集落の形成を認めず,それを5%あるいは10%酸素分圧の微好気性環境に移すと3週以内での集落の形成がみられ,この初代嫌気培養を通じて非増殖性の休眠状態で生残することがわかった.微好気性環境での発育に適応したクローンを新鮮な培地上に継代接種し嫌気的環境で培養を続けると3週以内での集落の形成がみられ,固型培地上での抗酸菌の嫌気的発育現象が観察された.同様の嫌気的環境への適応現象(休眠化および嫌気的発育)は結核菌の臨床分離株でも確認されたことから,卵培地上で観察されたこれらの現象は結核の持続感染,再発症にいたる様式として興味深い結果である. また嫌気的条件下で発育したクローンは生化学的性状試験において耐熱性カタラーゼ活性,ナイアシン産生に陰性化がみられ,鑑別・同定上の有益な指標となった.

収録刊行物

  • Journal of UOEH

    Journal of UOEH 35 (2), 109-117, 2013

    学校法人 産業医科大学

参考文献 (22)*注記

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