歩行開始期の仲間同士における主張的やりとりの発達過程 : 保育所1歳児クラスにおける縦断的観察による検討

書誌事項

タイトル別名
  • Longitudinal Observations of Toddlers' Self-Assertive Interactions with Daycare Peers
  • ホコウ カイシキ ノ ナカマ ドウシ ニ オケル シュチョウテキ ヤリトリ ノ ハッタツ カテイ : ホイクジョ 1サイジ クラス ニ オケル ジュウダンテキ カンサツ ニ ヨル ケントウ

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抄録

本研究は,子ども同士が互いに自己主張し合うやりとりの発達過程を明らかにすることを目的とし,主に2歳代の変化を検討するため,保育所の1歳児クラスで年度前半に2歳になった子ども5名の縦断的観察データを分析した。分析にあたっては,特に,強い不快情動の表出を伴わない平静な声調の発話によるやりとりの成立過程に焦点を当てた。その結果,I期(5〜8月)には,平静な声調の発話を含まず,物の取り合いや攻撃,不快情動の表出を伴う発話などによって葛藤がエスカレートするパターンが優勢であった。II期(9〜12月)になると,平静な声調の発話も含むやりとりが増加した。一方の子どもの,相手の意図を考慮する発話が,相手の不快情動や行動の調整,その後の交渉の展開を促す場合もみられた。さらにIII期(1〜3月)には,平静な声調の発話のみによるやりとりの割合が増加した。所有の順番や遊びについて言葉で交渉して相互理解を形成し,相互理解のもとでより複雑な意図調整が展開される場合も出現した。以上の結果から,保育所における2歳代の子ども同士の主張的やりとりは,情動や行動の相互調整の過程を含みつつ再組織化され,強い不快情動を表出せずに言葉でやりとりするパターンが成立してくることが示唆された。

収録刊行物

  • 発達心理学研究

    発達心理学研究 24 (2), 139-149, 2013

    一般社団法人 日本発達心理学会

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