塩化リチウムによるβ-cateninのリン酸化阻害がラット象牙芽細胞分化とectodin発現に及ぼす影響について

DOI
  • 門倉 弘志
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座保存修復学分野
  • 山崎 崇秀
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座保存修復学分野
  • 和田 康弘
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座保存修復学分野
  • 菊井 徹哉
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座保存修復学分野
  • 西村 翼
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座保存修復学分野
  • 廣瀬 公治
    奥羽大学歯学部口腔衛生学講座
  • 天野 義和
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座保存修復学分野
  • 横瀬 敏志
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座保存修復学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of the Inhibition of β-catenin Phosphorylation by LiCl on Differentiation and Ectodin Expression in Rat Odontoblast-like Cells

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抄録

目的:歯髄組織が損傷を受けた場合には,歯髄組織に存在する未分化外胚葉性間葉細胞が象牙芽細胞に分化して修復象牙質を形成する.この未分化外胚葉性間葉細胞から象牙芽細胞への分化機構の解明は,歯科保存治療におけるvital pulp therapyのさらなる発展にきわめて有用であると考える.近年,歯髄の創傷治癒過程において,分泌型糖タンパク質であるWntファミリーが各種細胞の分化に重要な働きをしていることが注目され,歯の発生過程のみならず,修復象牙質の形成もWntによってコントロールされていることがわかった.Wntシグナルの伝達経路のcanonical経路は,その情報伝達の機構が詳細に解明されており,細胞に塩化リチウム(LiCl)を作用させるとGSK3βの活性が阻害されβ-cateninの核内へ集積が起こり,canonical経路の擬似的な活性化が生じることが報告されていることから,Wntの作用を調べるためにLiClは多くの細胞に応用されている.これらの背景から本研究では,LiClを歯髄培養細胞に応用し,未分化外胚葉性間葉細胞から象牙芽細胞への分化過程においてcanonical経路にどのような役割があるのかを調べることとした.材料と方法:歯髄培養細胞にLiClを作用させ象牙質様結節形成に対する影響を形態学的に解析し,象牙芽細胞の各種分化マーカーおよびectodinの発現についてリアルタイムPCR法にて解析した.また,β-cateninのリン酸化に対するLiClの作用をwestern blotにより解析した.成績:歯髄培養細胞にLiClを作用させるとβ-cateninのリン酸化が抑制され,象牙芽細胞分化ならびに象牙質様石灰化結節形成が抑制された.さらにLiClの添加によって,WntとBMPのアンタゴニストであるectodinの発現が亢進した.結論:以上の研究結果から,canonical経路は象牙芽細胞分化ならびに象牙質形成を調節し,そのメカニズムにはectodinがかかわっていることが示唆された.また,canonical経路にはectodinを介したnegative feedback機構が存在することが示唆された.

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