「先制医療」における特定病因論と確率論的病因論の役割

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  • How would Specific Etiology and Probabilistic Etiology play in the Construction of "Preemptive Medicine" ?

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抄録

ここ数年,「先制医療」と呼ばれる予防医学的医療戦略が医療の先端部分で展開されつつある.本稿では,「先制医療」を医学哲学の病因論の立場から「先制医療」の特質を検討し,その展開のための課題について考察した. まず,第1 節では,「先制医療」の定義とカテゴリーについての導入を行なった.「先制医療」とは,病気の発症前に発症の蓋然性を検討し,蓋然性が高いならば,発症前に一次予防的介入を行ない,病気の発症を未然に防ぐという予防医学のアプローチの最新のものである. 第2 節では病因論のうちで特定病因論の特徴を述べ,「先制医療」がそれと類似性を秘めていることを示した.第3 節では,特定病因論から20 世紀後半以降,発展してきた確率論的病因論について詳しく述べ,「先制医療」が確率論的病因論のカテゴリーに当てはまることを指摘した.そして,第4 節では,確率論的病因論のカテゴリーをリスク(危険因子)の視点からとらえた「リスクの医学」を紹介し,まだ全体像がわかりにくい「先制医療」が目指すアプローチがまさに「リスクの医学」と同じであることを提示した.その上で,「先制医療」がもたらすであろう,その決定論的性格がクライエントに与える生命倫理的な問題点にも言及した.

「先制医療」

特定病因論

確率論的病因論

予防医学

「リスクの医学」

identifier:HO000800007566

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