海岸砂地畑の帯水層における脱窒活性の年間変動 : 静岡県遠州灘の事例

  • 高橋 智紀
    静岡県農林技術研究所:(現)農研機構東北農業研究センター大仙研究拠点
  • 福島 務
    静岡県農林技術研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Annual changes of denitrification activities in a shallow aquifer under a coastal sandy field : A case study on the Enshu coast in Shizuoka Prefecture, Japan
  • カイガン スナジバタケ ノ タイスイソウ ニ オケル ダッチツ カッセイ ノ ネンカン ヘンドウ : シズオカケン エンシュウナダ ノ ジレイ

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抄録

海岸砂地畑では,浅い帯水層での窒素除去が確認されている.本研究ではこのような環境下での脱窒活性と営農活動との関係を明らかにすることを目的とした.遠州灘沿岸の砂丘未熟土野菜畑を対象ほ場とし,2007〜2008年にかけての作付,土壌管理,地下水水質および脱窒活性をモニタリングした.地下水水質としては水温,地下水位,硝酸性窒素および亜硝酸性窒素(合計量を硝酸性窒素濃度とする),井戸中のDO濃度,DC_O濃度を地面から深さ100,150,200cmについて測定した.同時にToda et al.(2002)に準拠し原位置の脱窒活性を測定した.対象ほ場は夏作はカンショまたはサトイモ,冬作はニンジンを主体とする体系で鶏ふん堆肥500gm^<-2>y^<-1>を含めて67g-Nm^<-2>y^<-1>の窒素が施用された.地下水の硝酸性窒素濃度の中央値,第1四分位値,第3四分位値はそれぞれ5.8,0.2,18mg-NL^<-1>であり,硝酸性窒素濃度の高い時期は窒素施用のあった時期に一致した.井戸中のDO濃度の中央値は1.1mg-O_2L^<-1>で年間を通してほぼ安定していた.DC_O濃度は中央値が6.6mg-CL^<-1>であったが,カンショ作と鶏ふん堆肥の散布および天地返しがあった時期に増加し,最大値は14mg-CL^<-1>に達した.ライシメーターを用いた試験から圃場に堆肥として施用された有機炭素の一部は帯水層まで溶脱する可能性が示された.以上のように地下水水質は直上に位置するほ場の営農活動を反映していた.脱窒活性の中央値,第1四分位値,第3四分位値はそれぞれ10.1,4.3,31.0となり,硝酸性窒素濃度および水温との間に有意な正の相関関係が認められた(p<0.01).DC_O濃度との間には有意な相関は認められなかったが,DC_O濃度が9mg-CL^<-1>を超える場合に硝酸性窒素濃度が極めて低いという傾向が見られ,硝酸性窒素濃度の減少は脱窒によるものと推察された.

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