歯周炎を有さない若年者の口臭に対する歯肉の状態と歯垢および舌苔中細菌の関与

  • 松井 美樹
    岩手医科大学歯学部口腔医学講座予防歯科学分野
  • 岸 光男
    岩手医科大学歯学部口腔医学講座予防歯科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Contribution of gingival conditions and bacterial levels in dental plaque and tongue coating on oral malodor of young subjects without periodontitis

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抄録

目的 : 口中気体のVolatile Sulfur Compounds (VSC)濃度,歯肉炎,歯垢と舌苔試料における口腔微生物の量との間の関連性を検討することを目的とした.<br> 対象と方法 : 対象者は全身的に健康な成人男性13名,女性5名の18名(平均年齢22.7±3.1歳)であり,彼らは自発的に研究に参加した.口腔診査結果によって被験者を歯肉炎有所見者(歯肉炎群)と歯周組織健全者(健全群)の2群に分けた.ベースライン時, Winkel tongue coating index (WTCI)を評価した後にガスクロマトグラフィを用いて硫化水素(H2S)とメチルメルカプタン(CH3SH)濃度を測定した.続いて舌苔は舌背中央付近舌根部からマイクロスパーテルで3回擦過し,歯垢は下顎両側第一大臼歯から歯科用探針を用いて全量採取した.さらに被験者は軟毛ブラシを用いて丁寧に自分の舌を清掃した. 3日後,同様に口臭測定を行いベースラインと同一部位から歯垢と舌苔試料を採取した.採取した試料からゲノムDNAを精製し,総細菌とF. nucleatumを定量するためreal-time PCRに供した.<br> 結果 : ベースライン時,歯肉炎群ではCH3SH濃度,歯垢中総細菌量が健全群よりも有意に高かった.舌清掃3日後には,ベースラインと比較してH2S濃度は歯肉炎群で有意に減少していた.被験者全体では,単相関分析において歯垢中の総細菌密度とF. nucleatum量密度の間に高い相関が認められた.口中気体のVSC濃度を目的変数とした重回帰分析では,ベースライン時のBleeding on Probing (BOP)歯数, 3mmの歯周ポケットの存在, WTCI, F. nucleatum密度が口中気体のVSC濃度と有意に関連していた.<br> 結論 : 口中気体のVSC濃度は,舌苔のみならず歯肉の状態や歯垢中細菌にも影響されることが示された.

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