水平・垂直線の範列と統辞 : 20世紀初期に見るモンドリアンの芸術理念

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  • Paradigms and Syntax of the Horizontal Perpendicular line : Art idea of Mondrian looking in the early days in the 20th century

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抄録

文学者は自己の思いや感情・理念を文字を通して,また写真家は映像を介して表現する.もちろん表現方法は用いるコミュニケーション・メディアによって当然異なるし,厳密には同じメディアであってもその用い方などで異なる.本稿はあらゆる芸術作品の根底に共通にあるそれら作者の思い・理念を,ピエト・モンドリアン(1872-1944)の作品の色彩や形態と彼の芸術論からどのように表現したのかを考察したものである.ピエト・モンドリアンが作品の表現で幾何学的形態を用いたのは,その形態の中で表現しようとしたことを,鑑賞者に見出して欲しいとの願い,また感じて欲しいとの思いからである.抽象絵画とは空間を色彩空間として組立てることで,そこでの造形美がとりまく空間を転移できるかできないかでそれが消滅することにもなる.それぞれ文芸・芸術には固有の表現方法があるとしても,作者自身の表現において見出し現わすものであり,それは不断の心の修練の結果であるがゆえに,均衡を得た関係をより高度な厳密さで表現しようとする.この均衡を得た関係に注意を集中することで,自然界の種々なものに統合性を見出すことができ,心に本来備わった普遍性,調和,統合性の最も純粋な表現でもあるといえる.時に完全な形で表現された統合性を見いだせなくとも,表現のすべてを統合すること、そして統合性の完全な表現も可能なはずである.

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