戦後日本の工作機械工業の発展 : 1950~1980年代の国際化を中心に

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  • The Development of Machine Tool Industry in Postwar Japan : Focusing on its Internationalization from the 1950s to the 1980s

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抄録

本稿は、戦後日本における工作機械工業の発展について、1950~1980 年代の国際化の状況を中心に明らかにしようとするものである。この工作機械工業の国際化を、技術貿易、商品貿易、および海外進出という三つの側面の変化から見ることにした。まず、技術貿易については、戦後、欧米との大きな技術格差を縮小するために、企業は1950年代より欧米諸国から技術導入を行い、1960~70 年代にも外国企業の設計・製作技術の導入、吸収に努めた。80 年代には、さらに高いレベルの技術導入と消化吸収、および技術革新の効果が現れ、外国への技術供与も多く見られるようになった。次に、商品貿易に関しては、50 年代より欧米からの工作機械の輸入を再開し、60 年代になると、高度成長期の下で工作機械需要が激増した。しかし、日本経済の高度成長の終息が工作機械を含めた機械設備の内需低迷を招き、輸出拡大に拍車をかけることとなった。とりわけ、70 年代の日本製NC 工作機械は、完成度の高さから世界市場で注目され、日本の工作機械の国際競争力を高める主因の一つとなった。最後に、海外進出の展開については、1950~60 年代の貿易を主とした国際化の段階を経て、80 年代には貿易摩擦による対米輸出の自主規制や円高による輸出への影響を受け、主要工作機械メーカーは海外での現地生産・現地販売を本格化し、多様なビジネス形態が併存する国際化段階に入り始めた。海外進出の本格化によって、企業の国際競争力はさらに高められた。以上のように、戦後50 年代から80 年代までの工作機械工業の発展は、欧米からの技術導入や欧米市場への進出といった国際経済関係に深く関わっており、国際化なしには今日のような強い産業競争力を得られなかったと言っても過言ではないであろう。

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