アスペクト的動詞分類 : ロシア語と日本語に見られる普遍的特徴と個別言語的特徴

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  • Aspectual classes of verbs : universal and idioethnic features(Russian and Japanese)

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抄録

本稿ではアスペクトの主要な意味特徴である限界性の概念がロシア語と日本語でどのように解釈され、どのような形で各言語のアスペクト的動詞分類に相関するかを検討した。ボンダルコ(2002)によれば、言語形式が伝達する意味は言語普遍的な意味基盤とその個別言語特有の解釈的要素に区別される。限界性の異なる動詞グループを個別に取り上げ、各言語における限界概念の解釈の相似点と相違点を検討した。過程が内包する終了点を動作の限界として規定するマスロフ(1963)と、唯一の結果状態が生起する動作を限界的と規定したホロドーヴィチ(1979)による限界性の議論は、各々が対象とした言語の特徴を反映するもので、限界性の異なるタイプに焦点を当てている。それは、ロシア語では目的志向動作の終了限界であり、日本語ではある状態から別の状態の移行モメントである。故に、各言語のアスペクト的動詞分類の中心も、ロシア語ではвставать-встатьといった終了指示動詞であるが、日本語では「立つ-立っている」等の結果状態を表す動詞となる。ロシア語ではミクロの結果状態の漸次的蓄積による異質的過程を表す動詞が典型的なアスペクトペアであり、均質的過程を表す動詞とはアスペクト的振舞いで異なるが、日本語では過程の異質性・均質性はアスペクト的に差異化されない。また、過程の発展が動作の主体と対象の区別なく反映されるロシア語に対して、日本語では主に動作主体の状態変化が問題になり、ロシア語ではアスペクトに直接関係しないヴォイスが日本語ではアスペクトと密接な関係にある。しかし、周辺的な動詞グループ(例:瞬間動詞)では両言語とも過程は表せず、パーフェクト意味が前面に出るなど相似点もある。相似点は限界性が外延的状況を特徴づける主要な意味特徴として普遍性を持つことを確認させる一方で、相違点は各言語における異なる優勢的視座を反映して現れると考える。

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