暮らしの中のクロムから有機合成反応まで(身近な元素の世界)

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タイトル別名
  • 身近な元素の世界 暮らしの中のクロムから有機合成反応まで
  • ミジカ ナ ゲンソ ノ セカイ クラシ ノ ナカ ノ クロム カラ ユウキ ゴウセイ ハンノウ マデ

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抄録

クロム(Cr)は,金属元素の中の1つである。0価,3価,6価の酸化状態のクロムが一般的によく知られている。3価のクロムは体内の必須元素として肝臓,腎臓,脾臓などにごく微量存在し,生体内で重要な役割を担っている。例えば,クロムはインスリンと結合して血糖値を下げる糖質代謝や,血液中に含まれる中性脂肪やコレステロールの値を正常に保つための脂質代謝などに寄与している。一方,酸化数が6価のクロムは,有機合成において酸化剤としてよく活用されているが,毒性が強く皮膚に触れると炎症や腫瘍を引き起こす場合がある。また,体内に蓄積された場合には,肺や消化器系臓器に重篤な機能障害をおよぼす恐れが指摘されている。この6価のクロムにおける負の側面がことさらクローズアップされて「クロム=(イコール)人体に有害な毒」と一般的には認識されているように思われる。しかし,人類は,ステンレス鋼,めっき,台所用品に至るまでクロムを利用した"もの"によって今日の文明生活を享受しており,欠くことのできない元素の1つである。さらに,化学の分野では有機合成おいてクロムの特性を利用した重要な反応がいくつも知られている。本稿では,身の回りに存在するクロム化合物からクロムを用いた有機合成反応まで,紹介と解説を行う。

収録刊行物

  • 化学と教育

    化学と教育 62 (6), 300-303, 2014

    公益社団法人 日本化学会

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