農業用水の“環境用水”化に見る資源管理の編成可能性――東京都日野市の都市における農業用水路の存続をめぐって――

書誌事項

タイトル別名
  • The Formation of Resource Control: From Agricultural Irrigation Canals to “Environmental City Waterways”
  • ノウギョウ ヨウスイ ノ"カンキョウ ヨウスイ"カ ニ ミル シゲン カンリ ノ ヘンセイ カノウセイ : トウキョウト ヒノシ ノ トシ ニ オケル ノウギョウ ヨウスイロ ノ ソンゾク オ メグッテ

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抄録

<p>高度経済成長期以来の都市化によって,水田地帯であった東京都日野市は水田が現存している地区とほぼ皆無となった地区とが混在している。都市農業の後退に伴い,農業用水路の総延長や機能は縮減した。その一方,地域住民有志による用水の価値を見直す試みが早くから展開され,市行政も多様な価値づけに基づく“環境用水”化による存続を図ってきた。用水の清掃を自発的に担う「用水守」の制度化は,市民参画の点からも注目される。だが現状は市行政による“環境用水”の議論がやや先行し,農業用水路の中心的な管理主体である農家(用水組合)の意向と用水をめぐる有志の活動の歯車は噛み合っていない。つまり,用水の管理主体の再編が急務でありながら,実効性のある制度や仕組みづくりが不十分であり,多様なアクターを相互に結び付ける論理と手段が未構築となっている。本稿では,日野市における農業用水路の歴史的変遷と地域社会の変動との関連から現状を把握し,用水路をめぐる多様な価値づけや実践が,いかにして用水と都市農業を再リンクしうるのか,用水路の維持管理の方向性を具体的に,日野市の水辺の環境政策に位置づけた。そして,“環境用水”のガバナンスの構築に向けて,日野市民の現在の生活実態を軸とした水辺空間の再編・創出を図ることの重要性を指摘した。</p>

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