構造災と責任帰属――制度化された不作為と事務局問題――

書誌事項

タイトル別名
  • ‘Structural Disasters’ Requiring Due Social Responsibility: Institutionalized Forbearance and Organizational Stakes
  • コウゾウ サイ ト セキニン キゾク : セイドカ サレタ フサクイ ト ジムキョク モンダイ

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抄録

<p>本稿は,天災でも,人災でもなく,社会のしくみから不特定多数の人に重大な不利益を招いてしまう構造災に注目し,環境社会学の加害者・被害者論に収まらない問題群がどのような姿をもつかを,東日本大震災・福島第一原発事故に立ち入って定式化する。そのうえで,それらの問題の解明,解決の手がかりを示したい。その際,公共政策が立案,実施,評価される過程における二重の決定不全性(underdetermination),とりわけ第2種の決定不全性が公共政策の内実にどのような影響を与えるかという側面に注目したい。</p><p>具体的には,SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の運用指針,政府事故調の組織構造,高レベル放射性廃棄物処分地選定問題の個別分析に即し,法令にも人倫にも違反しないにもかかわらず,重大な結果を第三者にもたらしかねない「制度化された不作為」,第三者と利害関係者が抱き合わせになった組織構造のもとで問題が温存される「事務局問題」,超長期にわたる不確実性が集合的無責任につながりうる「無限責任」の問題を定式化する。</p><p>それらの問題をふまえ,後知恵に訴えた専門知の評価や責任配分ではなく,事前に発信された専門知への評価や責任配分の重要性を指摘する。とくに,重大事故にともなう無限責任を有限化して社会的責任を適切に配分するための制度の再設計に向けた,立場明示型科学的助言制度と構造災公文書館の設置を提言したい。</p>

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