断想IV : 第三項という根拠

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タイトル別名
  • A Fragmentary Note IV : "Eel" as the Third Term
  • 断想(4)第三項という根拠
  • ダンソウ 4 ダイ 3コウ ト イウ コンキョ

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抄録

「読むこと」「語ること」、すなわち「表現すること」とはそれ自体背理であり、虚偽を孕んでいる。発話主体は対象そのものを永遠に捉えられないからである。これは言語論の革命を受け入れ、「差異の体系」とするかぎり、認めざるを得ない。そこで主体と客体、そしてその主体が捉えた客体の向こうに了解不能の《他者》である<第三項>を置き、この三者の布置によって文学作品の表現行為を捉えたい。テクスト論で解体された文学の命、この再生の急所は第三項にあると私は考えている。「うなぎ」とは村上春樹の第三項に対する軽妙な呼び方である。この現象はもう一方で二百年以上封印されてきた「言語起源論」の蓋を開けることになり、また近代小説誕生の秘密を垣間見させてくれる。ポストテクスト論である「新しい作品論」の地平はここから始まるといってもよい。それによって近代小説、物語、詩、小品、批評、児童読み物(児童小説と児童物語)などの分類の根拠が暗示されてくる。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 57 (3), 63-74, 2008

    日本文学協会

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