キョウトハキリバチMegachile kyotensis Alfkenの営巣生態と巣の構造

書誌事項

タイトル別名
  • Nesting biology and nest architecture of the Japanese leaf-cutting bee Megachile kyotensis Alfken (Hymenoptera, Megachilidae)
  • キョウトハキリバチ Megachile kyotensis Alfken ノ エイソウ セイタイ ト ス ノ コウゾウ

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抄録

キョウトハキリバチの営巣生態と繭内幼態の発育経過などについて,2009-2011年に栃木県那須烏山市で観察し,そこで発掘した巣を基に調査した.結果の要約は次のとおりであった.1)キョウトハキリバチは自力掘坑性で,8月中旬から9月半ばに営巣活動する1化性種である.主な営巣地は林端部や伐採地,休閑地などであった.2)巣坑道は赤土の緩斜面につくられていた.坑道直径は7-8mmで,巣口から最深育房の末端までの距離は5-7cmであった.完成巣は3-6本の枝坑道をもち,単坑道の巣は見られなかった.3)完成巣では,葉片による巣口閉鎖と坑道充填の有無に巣間で差が見られた.また,1本の枝坑道あたりの育房数についても,巣間で差があった.4)完成巣の1巣あたりの育房数は4-10(平均6.0)個で,砂の少ない土壌中に営巣するハキリバチ種の中では育房数が比較的多かった.5)育房カップの卵形葉片のうち,最内側の数枚の葉片と,育房キャップの円形葉片のうち最内側の2-3枚の葉片は,粘着物で緊密に接着されていた.6)育房葉片の形態は既知種のそれらと類似していた.本種の葉片サイズは日本産種の中で,小型種のヒメツツハキリバチのそれに次いで小さかった.卵形葉片のサイズは比較的均一で,大半の葉片(全体の85%)は長さ12.1-15.0mmであった.育房キャップの葉片では,準円形葉片(B-2葉片)と正円形葉片(B-1葉片)が使われていた.育房底部に小型卵形葉片(A-3葉片)が使用されていた.7)育房あたりの葉片使用数は育房カップに10.8枚,育房キャップに6.6枚使用され,育房あたり総使用数は17.4枚であった.この数値はサキシマキヌゲハキリバチを除くほかの地中掘坑性種のそれよりも少なく,特に育房カップ用の葉片数は明らかに少なかった.8)育房カップでも育房キャップでも,すべての葉片が葉表を育房の内側向きになるように使用されていた.9)繭の平均の大きさはメス繭が長さ105×幅5.6mm,オス繭は長さ9.8×幅5.5mmの俵型で,繭層の厚さは0.09-0.12(平均0.11)mmであった.10)天敵として,労働寄生性のヨコジマコバネヤドリニクバエとキイロゲンセイが記録された.前者は重要な天敵で,30%(9/30)の育房がこの寄生バエの攻撃を受けていた.

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