太宰治「火の鳥」論 : 黒色テロリストの死と再生

書誌事項

タイトル別名
  • Osamu Dazai's "Hino-tori" : The Death of a Terrorist and the Regeneration of a Woman
  • ダザイ オサム ヒノトリ ロン コクショク テロリスト ノ シ ト サイセイ

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抄録

心中に失敗した女給高野さちよの再生譚「火の鳥」(昭14・5)には、黒色テロリスト須々木乙彦が登場する。彼の造型には、昭和十年の無政府共産党事件だけではなく、大正末期のギロチン社事件の影響も想定できる。彼の敗北とさちよの廃残は、皮相的で享楽的な時代状況において交叉している。「火の鳥」はさちよの再生譚という擬態をとりながら、古い道徳が滅亡する地点を超克する新しい「精神の女人」を創造する試みであった。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 49 (6), 45-55, 2000

    日本文学協会

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