オホーツク海中部沿岸地域に分布する多様な赤色土の成因

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タイトル別名
  • Mechanisms of formation of red soils in the middle coastal region of Hokkaido on the Sea of Okhotsk
  • オホーツク カイチュウブ エンガン チイキ ニ ブンプ スル タヨウ ナ アカイロド ノ セイイン

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抄録

オホーツク海中部沿岸地域の日高帯の赤色土(層)は,概ねpH(H_2O),リン酸吸収係数と交換性塩基の値が低く,CECの値が比較的高かったが,異なる地点もあった.遊離酸化鉄の活性度は0.4以下,結晶化指数も0.5以下でアリット型風化で生成した赤色土(層)ではなかった.粘土含量は高く粘土鉱物はカオリン鉱物とバーミキュライトが中心で,スメクタイトも含まれていた.一次鉱物は長石族がほぼ消失し,クリストバライトが多くて風化が進んでおり,粉砕した細土のX線回折で検出できる赤鉄鉱を含んでいた.赤色土(層)がある山麓緩斜面は,新第三紀中新世の火成活動で生成した安山岩や凝灰岩が鮮新世以降の永久凍土の発達や周氷河現象で移動・再堆積して成層斜面堆積物となり,凍結・融解で風化し土壌化した.そのため,山麓緩斜面の土壌断面には,大きさや風化程度の異なる安山岩や凝灰岩が転石として含まれ,断面の土色が水平方向に赤色から褐色に漸移するなど,各土壌断面の様相は異なっていた.安山岩や凝灰岩の一部は,母岩生成時に高温酸化を受けて赤鉄鉱が生成し,それを含む地層や岩石を母材として土壌化した部分が赤色土(層)になったと考えられる.常呂帯は中生代の付加体で,沿岸部は陸化後も火成活動がなく,日高帯とは赤色土の成因が異なる.鉄山や富丘に分布する赤色チャートや頁岩は堅硬な岩石で,風化に対し抵抗性が大きく,赤色土は崖錐堆積物としてみられた.知来の赤色土層は,母岩の輝緑凝灰岩が風化により赤鉄鉱を生成し,土壌化の過程で赤色化し,鮮新世以降の周氷河現象で移動・堆積したものと考えられる.以上のように,オホーツク海中部沿岸地域の赤色土(層)は,更新世の間氷期の温暖な気候条件で生成したものではなく,母岩の高温酸化や風化など多様な成因を持つ.

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