最低賃金値上げ以降のタイ日系消費者金融企業における人材開発の必要性 : 経営現地化モデルと「求められる人材像」

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The Necessity of Human Resource Development in a Japanese Consumer Credit Company : How did they localize management and what kind of candidates were sought?

抄録

本稿は、タイ日系消費者金融企業、事例としてプロミス・タイランドを取り上げ、主として2013年1月の最低賃金値上げ以降の人材開発の必要性について論じたものである。本稿が対象とするのはタイにおける日系消費者金融企業であり、同企業がタイにおいてどのような事業展開をし、そこでいかなる人材開発が必要となるかを、研究課題とした。近年では、2013年1月のタイにおける最低賃金の値上げは、雇用環境においては脅威ともなるが、消費市場の活性化をもたらしうる。タイ経済の状況を鑑みると、人口ボーナスの終了が2015年までと予測され、次第に労働力不足問題が慢性的に発生する状況に移行していく。一方で、賃金上昇が同時に起こり、消費市場としての魅力は徐々に増すことが予想される。こうした状況の中で、日系進出企業においては、日本人管理職数人と多数の現地従業員という経営から、現地従業員の管理職登用への移行が重要となってくる。また雇用環境においては、対日感情の良好さが有利に働く一方で、英語を公用語にはしにくい、ジョブホップが盛んなど現地労働者の安定的な雇用には課題が少なくない。いかに現地的な経営体制を確立できるかであるが、タイの場合、現地に即しつつ日系本社側の意向も尊重される、トランスナショナルな経営体制が求められると考えられる。本稿では、先行研究(桑名・岸本2008)、及び「経営現地化モデル」が示す指標を参考に、プロミス・タイランドの経営状況を分析し、また昨今の人材開発のケースをもとに、人材開発の必要性がいかに生じ、またどのような方向に進みつつあるか、さらにはどのような方針を持つべきかについて検討した。プロミス・タイランドでは、今後の店舗増加に備えて、人材開発の準備を進めている。業務習得だけではなく、将来必要となる知識獲得のため、現地大学セミナーに従業員を参加させるなど人材開発も新たな段階に差し掛かっている。こうした状況を分析・検討し、プロミス・タイランドにおいて進捗しつつある人材開発の様相を検討した。結論として、先行研究において人材開発において問題となるとされた日本的職務構造に、十分配慮した場合でも、次なる課題があることが判明した。すなわち、「経営の方向性の共有」など現地事業固有の課題を、いかにして人材開発のプロセスにも浸透させていけるかが課題であるとした。その際に、重要となるのは、同社に継続勤務することで得られる、キャリアビジョンを、現地従業員に示すことであるとした。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205836402560
  • NII論文ID
    110010016028
  • DOI
    10.20752/japf.1.0_41
  • ISSN
    21899258
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ