コミュニケーション理論に基づく社会科教育論 : 「社会と折り合いをつける力」の育成を目指した授業デザイン

書誌事項

タイトル別名
  • Social Studies Education based on Luhmann's Theory of Communication : Lesson study for enabling students to reconsider the relationship between society and oneself
  • コミュニケーション リロン ニ モトズク シャカイカ キョウイクロン : 「 シャカイ ト オリアイ オ ツケル チカラ 」 ノ イクセイ オ メザシタ ジュギョウ デザイン

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抄録

成熟社会を迎えた現代,社会はさらに複雑化し,日常の現象を一つの見方・考え方で捉えることは困難になりつつある。本論文は現代社会の理解,及びそこで主体的に生きる市民性育成の方略として,コミュニケーション理論に基づく社会科教育論の理論と実際を小学校社会科授業とともに示すものである。コミュニケーション理論に基づく社会科は,子どもたちを理想とする社会へコミットすることを強制する教育論ではなく,現実社会を受け入れ,その社会と折り合いをつけながらしなやかに生きるスキルを身につけることを目標とした教育論である。教育内容は,社会的に構築・承認された社会現象が現実に機能・運用されている実態,及びそれと自身との関係,教育方法は,その運用過程の理解・分析・解釈である。上記の理論を具体化する方略として,本稿では漫画メデイア"ONE PIECE"を用いて自由思想の多様性を分析する学習をデザインした。授業は以下4つの手続きをとる。第1は自己意識の明確化,第2は思想(フレームワーク)の多様化(社会認識の多義性,及びその可変性の認識),第3は複数のフレームワークの折衝,第4は社会における自由思想の相克と受容過程の理解と分析である。この4段階の学習を通して,社会を客観的に捉える授業ではなく,自らを社会の内部に位置付け,社会と折り合いをつける力を育成する社会科授業を開発・実践し,子どもの認識変容を踏まえた実践結果とともに示した。

収録刊行物

  • 社会科研究

    社会科研究 83 (0), 1-12, 2015

    全国社会科教育学会

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