大阪府におけるエンテロウイルス感染症の流行状況と分子疫学的解析(2013年度)

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  • Epidemic and molecular epidemiological analysis of enterovirus infection in Osaka Prefecture(Fiscal 2013 Report)

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抄録

感染症発生動向調査事業に基づいて、五類定点把握感染症の病原体定点から大阪府立公衆衛生研究所には検体 が搬入される。本稿では、2013 年度に搬入された無菌性髄膜炎、手足口病およびヘルパンギーナと診断された患 者から採取された検体を対象に実施したエンテロウイルスに関する検査結果を総括する。全156 検体のうち、90検体(58%)からエンテロウイルスが検出された。各疾患における主要なウイルス血清型の検出割合は以下の通りである:無菌性髄膜炎では、Coxsackievirus B5 (CB5、5/25 症例、20%)、手足口病では、Coxsackievirus A6 (CA6、19/38 症例、50%)およびEnterovirus 71 (EV71、11/38 症例、29%)、ヘルパンギーナでは、Coxsackievirus A5 (CA5、4/15 症例、27%)およびCoxsackievirus A8 (CA8、4/15 症例、27%)。無菌性髄膜炎患者でCB5 が検出された5 症例中、4 例が生後1 カ月齢以下の患者であった。このうち2 例は生後1 週間以内の発症であったことから垂直感染が疑われた。手足口病はCA6 およびEV71 がシーズンの初めから最後まで検出される混合流行であった。CA6 とEV71の分離株についてviral protein 1 (VP1)領域に対する系統樹解析を実施した。その結果、分離されたCA6 の3 株全て、CA6 による手足口病が大流行した2011 シーズンの株よりも2012 年に中国で検出された株や2013 年にマレーシアで検出された株と近縁であった。また、分離されたEV71 のうち、遺伝子解析が実施できた5 株中4 株が大阪市、広島県、台湾で近年検出された株と近縁であった。2011 年シーズン以降、手足口病の原因ウイルスとしてCA6が主要な血清型の一つとなりつつあるが、EV71 と同様にCA6 も国内だけでなく近隣諸国との間で流行を形成する可能性が考えられた。

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