大阪府におけるエンテロウイルスおよびヒトパレコウイルス感染症の流行状況と分子疫学的解析(2014年度)

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  • Epidemic and molecular epidemiological analysis of enterovirus and human parechovirusinfection in Osaka Prefecture (Fiscal 2014 Report)

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抄録

感染症発生動向調査事業に基づいて、五類定点把握感染症の病原体定点から大阪府立公衆衛生研究所には検体が搬入される。本稿では、2014年度に搬入された無菌性髄膜炎、手足口病またはヘルパンギーナと診断された患者から採取された検体を対象に実施したエンテロウイルスおよびヒトパレコウイルスに関する検査結果を総括する。全190症例のうち、142症例(74%)からエンテロウイルスまたはヒトパレコウイルスが検出された。142症例中、32症例(23%)からヒトパレコウイルスが検出された。各疾患における主要なウイルス血清型の検出割合は以下の通りである:無菌性髄膜炎では、Human parechovirus 3 (HPeV3) ; 40% (8/20症例)、Coxsackievirus A9 (CVA9) ; 10% (2/20)、Coxsackievirus B4 (CVB4) ; 10% (2/20)、Echovirus18 (E18) ; 10% (2/20)およびEchovirus30 (E30) ; 10% (2/20)、手足口病では、Coxsackievirus A16 (CVA16) ; 41% (18/44)およびHPeV3 ; 23%(10/44)、ヘルパンギーナでは、sackievirus A2 (CVA2) ; 27% (21/78)、Coxsackievirus A4 (CVA4) ; 25% (20/78)およびHPeV3 ; 18% (14/78)。無菌性髄膜炎患者でHPeV3が検出された8症例中7例が生後1カ月齢以下の患者であった。一方で、手足口病およびヘルパンギーナ患者でHPeV3が検出された患者(各10症例および14症例)の年齢の中央値はともに1歳7カ月であった。手足口病では、6月から8月にはHPeV3の検出が優位で、9月以降は、CVA16が主要となった。このように手足口病のおける主要な原因ウイルスの入れ替わりを伴う流行パターンは、2014年度に特徴的であった。3疾患患者それぞれから検出され、viral ein 1 (VP1)領域が増幅できたHPeV3に対し系統樹解析を実施したところ、各ウイルス株は、疾患とは関係なく2つのクラスターに分類され、2011年に山形県で検出された株と最も近縁であった。HPeV3の感染による症状は、エンテロウイルス感染症と区別が困難であり、3疾患のそれぞれから検出されたウイルス株においても疾患特有の遺伝的特徴は認められなかった。そのため、これら3疾患の原因としてHPeV3を考慮し、エンテロウイルスと同様に流行状況を把握する必要があると考えられる。

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