日本の大学におけるアラビア語学習者のアラブ文化に対する興味

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  • Interest in Arabic Culture among Arabic Language Students in Japanese Universities (<Special Feature> Teaching and Learning Arabic)
  • Interest in Arabic Culture among Arabic Language Students in Japanese Universities

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抄録

アラビア語教育が多くの日本の大学で実施される等、アラビア語学習の機会が増している。おそらく学習者において学習目的の多様化等の変化が生じており、教育のあり方にも見直しが求められよう。しかし、アラビア語教育の改善に必要な学習者の実態が十分把握されているとは言えない。本研究はアラビア語学習者としての日本人大学生におけるアラブ文化への興味の性質を、質問紙調査から得られたデータの統計的な解析によってあきらかにすることが目的であった。学習者の興味は学習において重要な機能を果たすものであり、アラブ文化は日本人学習者の学習動機との関係が推定される興味の対象である。あきらかにする性質には、アラビア語専攻学生(専攻)とアラビア語科目を受講する非アラビア語専攻学生(非専攻)の相違を考慮しつつ、各文化要素への興味や、アラビア語学習に関する学習結果との関連を含めた。調査対象者である専攻及び非専攻の、それぞれ291名及び371名から有効な回答を得た。分析対象とした主な質問項目は、アラブ文化興味を評定する12項目と、学習満足感、学習意欲、努力感、主観的理解度、主観的成果、成果満足感、学習の自己効力感、学習を通じた自己実現感、習得目標、学習不安、習得難易感といった11のアラビア語学習結果を評定する32項目であった。結果として、アラブ文化の12要素中、6要素への興味で、専攻群が非専攻群よりも統計的に有意に高かったが、残りの要素に差は認められなかった。群内における各要素に関する得点の高さについて、群間の差を検討すると、イスラームへの興味は専攻群で比較的高く、非専攻群で低いといった不一致が認められたものの、他の要素は両群でほぼ同程度であった。この12要素への興味の得点を分析した結果、両群に単一因子が認められた。アラブ文化興味は非専攻より専攻がやや強いものの、性や学年による差はほとんど確認されなかった。アラブ文化興味が示す学習結果との関係について、各学習結果との相関係数と、アラブ文化興味尺度の高得点群と低得点群における学習結果の比較から、アラブ文化興味が強いほど学習満足感、努力感、主観的理解度が強く、特に学習意欲、学習の自己効力感、学習を通じた自己実現感、習得目標が強いが、他の学習結果はアラブ文化興味とほとんど関係が認められなかった。また、こうした関係は専攻と非専攻でほぼ同様であった。本研究結果は、あきらかとされたアラブ文化興味の性質から、アラビア語学習におけるアラブ文化興味の重要性を改めて示すものであった。最後に、専攻と非専攻に認められた結果の共通性について、アラビア語教育の改善を視野に入れた考察を行った。

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