ブドウの芽の休眠打破に伴う生理的変化

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  • Physiological aspects of bud associated with breaking dormancy in grapevines

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抄録

ブドウ‘ピオーネ’について、休眠の導入と覚醒の過程における芽の生理的変化を調査した。休眠導入期の8月から覚醒初期の12月まで露地で栽培されている個体から芽を採取し、呼吸量、エチレン生成量および含水率を測定した。調査期間を通して呼吸量は低く、エチレンもほとんど検出されなかった。芽の含水率は8月から10月まで僅かに上昇し、その後は変化がみられなかった。休眠覚醒初期の12月から発芽期の4月中旬まで、芽の呼吸量とエチレン生成量を測定した。呼吸量は4月上旬までは低く推移し、発芽(4月13日)の直前に急上昇した。エチレンは測定期間を通して低かった。休眠期の12月、1月および2月に採取した穂木を2%H2CN2または蒸留水(対照)で処理し、25℃以上に保ったプラスチックハウスに入れて発芽を調査するとともに、経時的に芽の呼吸量、エチレン生成量および含水率を測定した。両時期とも対照区よりもH2CN2処理区の発芽が早く、しかも休眠の深い12月処理で区による差が大きかった。両区いずれの時期とも、芽の呼吸量は発芽直前に急上昇したのに対し、エチレン生成量は調査期間を通して低いままであった。芽の含水率は、いずれの時期および処理区とも発芽期に低下し、特にH2CN2処理区の低下が大きかった。休眠最深期の10月に採取した穂木にACC、GSH(還元型グルタチオン)およびGSSG(酸化型グルタチオン)を処理し、発芽に及ぼす影響を調査したところ、ACCだけが発芽を促進した。同様に、4種のシアン化合物(CaCN2、H2CN2、KCN、NaCN)を処理したところ、H2CN2を除き有意に発芽を促した。これらの結果を基に、ブドウの発芽と生理的変化との関係および休眠覚醒に及ぼすエチレン生合成関連物質の作用性について考察した。

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