ユリアヌス帝の意識のなかのローマ皇帝像--『ひげぎらい』における法律意識の分析を中心に

HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • The self-image of the Roman emperor in Julian the apostate's Misopogon
  • ユリアヌステイ ノ イシキ ノ ナカ ノ ローマ コウテイゾウ ヒゲギライ ニ オケル ホウリツ イシキ ノ ブンセキ オ チュウシン ニ

この論文をさがす

抄録

後期ローマ帝国の皇帝は, 一般的にはモムゼン以来「専制君主」として理解されており, 現在の学界でもこの説は支配的なものと見てよい。しかしながら, この「専制君主」としての皇帝像は, 概ね帝国民の側から見たイメージを中心に描かれてきたものであった。一方, 皇帝自身が描く皇帝像とは, どのようなものであろうか。本稿は分析対象として, 後世「背教者」と揮名された皇帝ユリアヌス(正帝位361-3年)を取り上げ, 彼の代表作『ひげぎらい』における彼の法律意識を軸として, ユリアヌス帝の意識のなかのローマ皇帝像を明らかにしようとする試みである。本稿の考察によれば, ユリアヌスは自らを「法律の上の専制君主」としてではなく「法律の守護者」であると措定し, ローマ皇帝は法律に従属しなければならないと表明する。これは皇帝の「散発的発言」といったレヴェルにとどまらない。すなわち, ユリアヌス帝の意識のなかのローマ皇帝像とは, 「専制君主」の皇帝像からは隔たったものである。また, 彼の意識のなかには, 単にその理想が表現されているだけではなく, 彼の置かれた現実の政治的環境が反映されていることも見て取ることが出来る。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ