自治体病院の業績評価と会計情報 -業績評価上の問題点と適切な会計技法の考察-

書誌事項

タイトル別名
  • ジチタイ ビョウイン ノ ギョウセキ ヒョウカ ト カイケイ ジョウホウ : ギョウセキ ヒョウカ ジョウ ノ モンダイテン ト テキセツ ナ カイケイ ギホウ ノ コウサツ
  • The role of accounting data in performance evaluation of local public hospitals -A study of problems and accounting methods-

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抄録

日本の医療を支える重要な存在として、自治 体病院の存在が指摘できる。自治体病院とは都 道府県や市に代表される地方自治体が運営する 病院であり、公立病院の中に含まれる病院であ る。個々の病院によって規模や活動はさまざま であるが、地域医療の中核的な存在を成してい る場合も多い。 自治体病院の多くはその主たる目的である、 政策医療の実施を中心とした活動を行っている。 具体的には、救急医療や先端医療、採算性の低 い診療科の設置と維持などを行っている。救急 医療を例にとると、自治体病院は必要とされる 高額な医療機器や設備を備えると共に、救急医 療に対応できる人材等を揃えている。また最新 の技術や治療法、薬品を用いた医療、すなわち 先端医療の実施も行っている。さらに、私的病 院が収益性の点等から忌避することが多い診療 科に関して、自治体病院が当該診療科を設置し て対応している。上記の諸点から、自治体病院 は都市部、地方を問わず、地域に欠くことので きない存在となっている。 しかし、自治体病院は上記の諸点から、私的 病院と比較してより多くの費用が発生する傾向 が強い。それゆえに、自治体病院の損益情報で は損失計上が恒常化している。損失は税金に基 づく補助金の投入等によって補填され、自治体 病院の活動と存続が継続されている。 自治体病院の損益情報を一般的な企業の経営 評価の視点から情報利用者が用いた場合、自治 体病院の多くは経営難に陥っていると判断する であろう。そして、自治体病院に対しては、自 治体の財政状況悪化を主たる理由として、自治 体病院に対する税金の投入額を縮小するという 圧力が、自治体の首長や議会等から常に課せら れてもいる。 また、地方自治体の財政状況悪化以外にも自 治体病院に対する税金の投入額を削減する外部 要因が存在しており、自治体病院の維持・存続 を脅かしている。自治体病院への税金の投入に 影響を及ぼす要因の具体例として、後述する 「公立病院改革ガイドライン」や私的病院の主 張するイコールフッティング論などが挙げられ る。特に前者の「公立病院改革ガイドライン」 では、自治体病院にも企業の経営評価と同様の 評価指標を用いて経営評価を実施し、自治体病 院の経営健全化を図るという考え方が明示され ている。そして、自治体病院に対して期間損益 面での業績向上を要求する、外部強制要因となっ ている。 しかし筆者は、自治体病院に企業や私的病院 と同様の評価指標を用いて経営評価を行うこと には問題があると、強く感じている。上記の考 え方に基づき、筆者は自治体病院に対する外部 の圧力、自治体病院の主たる目的、私的病院と の差異、そして経営評価の指標として適切な情 報を作成・開示する際に有用と考えられる会計 面から対応を、本稿にて指摘するものとする。

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