Trends and issues on the Japan Verified Emission Reduction (J-VER) scheme and carbon offset in Japan

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  • 日本におけるJ-VER制度とカーボンオフセットの傾向と課題

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抄録

本論ではJ-VER制度と日本国内のカーボンオフセットについて,これまでの設立過程や制度の内容を概説した。そして市場における動向や制度をとりまく状況を整理した上で,いくつかの課題を見いだし,制度の発展に向けた解決策を議論した。J-VER制度の認証水準は,国内の他のVER制度に比して厳しいものであるが,京都メカニズムに倣った国際的な他のVER制度とは同水準にあり,高い信頼性の担保に寄与している。またJ-VER制度の認証費用は百万円程度と安いものではないが,2011年4月に認証を取得した東京大学千葉演習林・間伐推進プロジェクトの例では,認証費用と作業に要する人件費を見込んだ場合でも,クレジットの取得費用は4,424円/CO2トンとなり,最近のクレジットの買い手気配値7,333円/CO2トンを下回る。また日本国内のカーボンオフセット市場では他の自主的クレジットも取引されておりJ-VERとのシェア争いが起きているが,環境省はJ-VERを差別化するために,たとえば地球温暖化対策推進法に従い企業が温室効果ガス排出量を報告する際に調整後排出量としてJ-VERの活用を認めるといった対策を講じている。また昨今J-VERは,認証・発行量の増加に反して取引量の減少が顕著で,供給過剰の状態にある。さらにJ-VERの取引における売り手と買い手の気配値に大きな開きがあることから近い将来,J-VERの販売価格は下落することが予想される。停滞したJ-VERの取引を今後,活性化してゆくためには,カーボンオフセット市場において大きな比率を占めるCERのシェアを奪う必要がある。そのためには企業に対してカーボンオフセットを普及・啓蒙する際に,J-VER活用による国内排出削減/森林吸収プロジェクトへの投資といったCER活用にはない,企業CSR上のメリットを強調する必要がある。さらに現状でJ-VERプロジェクト事業者に偏った支援制度を是正し,たとえばJ-VER購入企業に税制優遇をはかるといった措置をとることも有効と考えられる。

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