沖縄における陸域での新たなサンゴ保全技術の開発

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タイトル別名
  • オキナワ ニ オケル リクイキ デ ノ アラタ ナ サンゴ ホゼン ギジュツ ノ カイハツ
  • Development of a new land management practice for coral conservation in Okinawa, Japan

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抄録

沖縄ではサンゴの被害が収束しておらず,その対策は依然として喫緊の課題である。現在までのところ,被 害の原因は白化,海水汚染や海底汚染による生息環境の悪化,食害であるとされるが,赤土汚染(陸域から 海域への土壌の流入)はその全てに関与している。本研究では,赤土発生量の70%以上を占める農地(特に サトウキビ畑)において新たな赤土流出防止技術「シカクマメバンド」を開発し,その有効性を検証すること を目的とした。「シカクマメバンド」の概要は以下の通りである:①シカクマメ(Psophocarpus tetragonolobus (L.) D.C.)をサトウキビの収穫が終わる3 月下旬~4 月上旬に植えることで,カバークロップ(被覆作物) として地表面を保護し,梅雨時期の赤土流出を抑制する。②9 月のサトウキビ植付け時にシカクマメを等高 線に沿ってバンド状に残す(農地の1~2 割のシカクマメを残し,残りの8~9 割のシカクマメは緑肥として 土壌へ鋤き込む)。これにより,土壌肥沃度の改善が期待できるだけでなく,サトウキビ植付け部分から流出 する赤土をシカクマメのバンドで捕捉することができ,赤土の畑外への流亡を抑制できる。③6・7 月に若さ や,10・11 月に完熟種子が収穫できる。なお,対象作物にシカクマメを選定したのは,シカクマメの若さや および完熟種子が潜在的な経済価値を有するためである。国際農林水産業研究センター熱帯・島嶼研究拠点 (石垣市)の傾斜圃場を用いた試験の結果,「シカクマメバンド」を導入した区では,表面流去水量および土 砂濃度の低下により赤土の流出が94%抑制されることがわかった。このことから,「シカクマメバンド」が 赤土流出防止技術として有効であることが示された。しかし,「シカクマメバンド」では農地の1~2 割でサ トウキビが栽培できないことから,今後の研究ではシカクマメが野菜や発酵食品等として農家の所得向上に 貢献し得るか,その可能性を検討する必要がある。

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収録刊行物

  • 観光科学研究

    観光科学研究 (6), 17-23, 2013-03-30

    首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 観光科学域

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