貝形虫の殻のMg/Ca比,Sr/Ca比による古環境推定の現状と問題点

  • 森下 知晃
    金沢大学フロンティアサイエンス機構/ハワイ大学マノア校地質学・地球物理学科
  • 山口 龍彦
    日本学術振興会海外特別研究員/カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋学研究所
  • 眞柴 久和
    金沢大学大学院自然科学研究科地球環境学専攻
  • 神谷 隆宏
    金沢大学大学院自然科学研究科地球環境学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • A review of the utility of Mg/Ca and Sr/Ca ratios of ostracode valves as a tool for paleoenvironmental reconstructions
  • カイケイチュウ ノ カク ノ Mg Caヒ Sr Caヒ ニ ヨル コ カンキョウ スイテイ ノ ゲンジョウ ト モンダイテン

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抄録

微小甲殻類の一種である貝形虫は低マグネシウム方解石の殻を持っており,この殻の微量元素量および,その比は古環境指標として利用されている.一般に海棲の貝形虫の殻のMg/Ca比は,生息場の水温と強い相関があり,淡水棲の貝形虫の殻のMg/Ca比およびSr/Ca比は生息場のMg, Sr量を反映している.既存の研究を総括した結果,次のことが明らかになった.1)続成作用による殻のMg/Ca比およびSr/Ca比の変化を評価する方法は確立されていない.2)殻のMg/Ca比およびSr/Ca比の分配係数の範囲は分類群,生息場,系統によって異なる.3)これらの分配係数の範囲は種内の成長ステージによって異なる場合がある.4)海棲種のMg/Ca比の分配係数から見積もられる水温は約2~4℃の誤差を伴う.5)殻内の微小領域でのMgの分布の不均一性は殻全体のMg/Ca比に影響する.貝形虫殻のMg/Ca比,Sr/Ca比をより精密な環境指標として確立するためには,生息環境のMg/Ca比,Sr/Ca比,続成作用や試料の前処理の厳密な評価,およびより多くの分類群のデータが必要である.

収録刊行物

  • 地質学雑誌

    地質学雑誌 116 (10), 523-543, 2010

    一般社団法人 日本地質学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (71)*注記

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