デンマークにおける子どもの社会的養護 : 予防的役割の必要性

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  • Support System for Vulnerable Children and their Families in Denmark
  • デンマーク ニ オケル コドモ ノ シャカイテキ ヨウゴ ヨボウテキ ヤクワリ ノ ヒツヨウセイ

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抄録

本稿の目的は、デンマークの社会的養護施策が持つ予防的役割を示し、子育て支援政策と連続性のある社会的養護施策のあり方について考察することである。日本では現在、児童虐待の増加などにより深刻化する社会的養護の問題に関して、子育て支援や家族支援の政策とは切り離されて扱われている現状がある。本稿ではデンマークの制度と自治体での実践を調査することによって、社会的養護施策がより一般的で普遍的なサービスとして提供され、子育て支援の一部として機能する可能性を示す。デンマークの社会的養護分野では長い間、親子を分離する家庭外ケアが主流であったが、近年、在宅のまま親子を支援する予防的ケアを充実させ、親子分離を未然に防ぐケアに重点が置かれている。自治体単位で行われる実践には、問題を抱える家族に対するセラピーやカウンセリングだけではなく、それを支える学校や保育所、警察との連携も見られた。これはR.Krugman が示した、社会が「虐待対応」という特別なニーズを持つ子どもや家族への対症療法的なケアを行う社会から、普遍的な子育て支援を目指す社会へと成熟していく過程と一致している。予防の視点に基づいた社会的養護施策は、保育サービスなどの普遍的な子育て支援政策と同じように、親と社会の「共同養育」の実践を目指すものだと言えるだろう。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 35 53-71, 2014-03-31

    大阪大学大学院人間科学研究科社会学・人間学・人類学研究室

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