「林政八書」の「山奉行所規摸帳」 : その和文・英訳と内容分析

書誌事項

タイトル別名
  • Modem Japanese and English translations and content analysis of 'The Scope of the Bureau of Forest Administration' from the 'Eight Volumes on Forest Administration'
  • 『 リンセイ ハチショ 』 ノ 「 ヤマ ブギョウショキモチョウ 」 : ソノ ワブン ・ エイヤク ト ナイヨウ ブンセキ

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抄録

この「山奉行所規摸帳」には、杣山、造船、育林などに関わる制度、技術、罰則などが記されているが、その内容から新たな知見を抜き出して列記すれば、以下のとおりである。1つは、間切や村レベルで、総山当や山当の林務行政職員の他に、山師、山工人、木引人などの林業技術者が存在していたことである。山師は山で意図する寸法が取れる木を鑑定する技術者である。山工人は伐木、加工、保育作業などを行う技術者である。この山工人は山の手入れ方法に関する知識もち、杣山の保全に重要な役割を果たす技術者として位置づけられている。木引人は鋸を使って木を製材する技術者のことである。これまで斧を使って大木を削り取って製材する方法が行われていた。これでは木の浪費になるので、木引人を増やして、鋸で製材するように王府は指導している。2つは、御用木帳によって、杣山、里山、村落などに生育する有用樹木を管理していたことである。この御用木帳には、木の所在地、木の種類、幹回り、などが記載されていた。今日の林務行政で使われている「森林簿」(森林タイプ、蓄積量、場所などが記載)に類似する。御法度木として21種類の木(「山奉行所公事帳」1751に記載)が御用木帳に登録され、厳しく管理されていた。3つは、中国に渡る唐船の用材を確保するために、琉球王国内の民間の船の数を調べ、これらに焼印(認証印)を押して徹底的に管理していたことである。これらの船用材の管理は、伐採木に関しては山役人、船の建造に関しては、手形(船の設計情報)をもとに各港に常駐する担当役人が行っていた。大木をくり抜いて作るクリ舟は、木の浪費になるとして、この規模帳以後、製材した板材を張り合わせて作るハギ舟を作るよう指導している。4つは、御用木を許可なく伐採した者、杣山を焼き明けたりした者などに関する罰則規定が、数多く記されていることである。違反行為の内容によっては、一生の流刑に処すなど、かなり厳しい掟が設けられている。罰則のほとんどが罰金刑になっていて、罰金の半分は告発者に渡し、残りの半分は造林費用に当てるシステムになっている。5つは、荒廃した杣山の管理を徹底するために、制度や組織体制の改革を新たに行っていることである。たとえば、これまで杣山の管理は数間切が模合山(共同利用地)のように考えて利用してきたが、この規摸帳以後、1箇所の間切単位に山の管理区域を定めて、御用木の調達も1間切単位で行われるようになっている。この間切単位の杣山の区域は、その後、さらに村ごとに細区分され、各村が共同で管理する山の所在が明確にされていく。さらにこれらの管理体制を強化するため、国頭地方や中頭地方に山奉行や筆者の役職を新設し、山の管理の組織体制の強化を図っているのである。

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