<原著>唾液の移動と電位変化の出現の遅れ

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  • <ORIGINAL>The movement of parotid saliva and time lag of apperance of electrical change
  • ja

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抄録

P(論文)

唾液の分泌時にみられる電位変動についてはBayliss & Bradford(1885)がイヌの顎下腺について報告している。その後Iwama & Shinjo(1950)はヒトの唾液分泌時に耳下腺乳頭部にみられる電位変動は耳下腺細胞の活動電位であろうと推定している。一方,猪股ら(1984a)によれば耳下腺乳頭部から導出される電位は10mV以上あるにもかかわらず,耳下腺上の皮膚と耳下腺乳頭部近傍部から導出される電位は0.3mV以下であり,また同一被験者で,しかも唾液の分泌量もほぼ同じであるにもかかわらず,耳下腺乳頭部にみられる電位変動には大きな差異が見られる。以上の事実から猪股ら(1984a)は耳下腺乳頭部の電位変化は耳下腺の活動電位によって引き起こされると考えるのには無理があることを指摘している。猪股ら(1984b)は唾液中に存在するイオンの総和(total charges)の変動経過と耳下腺乳頭部の電位変動経過とは平行の関係にあることを見出している。さらに猪股ら(1992,1995a,b)は安静時と刺激時の唾液を採取し,これらの唾液間にも電位差が存在することを確認した。その大きさは舌背刺激直後は最も大きく,刺激時間の経過と共に次第に小さくなり,この経過は耳下腺乳頭部の電位変化の経過と似ていると報告している。最近,猪股ら(1997)は採取した唾液を再度,唾管に注入することによって,舌背刺激時の乳頭部の電位変動の振幅の約80%の振幅の電位変動が記録出来たと報告している。これらのことから耳下腺開口部に見られる電位変動の起源は唾液自身にあり,しかもそれは唾液中の各イオンの総和に依存するものであると考えている。もしこの考えが正しいのであるならば,唾液の移動とともに電位変動の移動も現れるはずである。本論文はこのことを確認することを目的とした。

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