Toll-like receptor 2シグナルにおけるSrcファミリーキナーゼLckの役割

HANDLE オープンアクセス

この論文をさがす

抄録

TLRは自然免疫系で病原体の侵入を感知するだけでなく,T細胞が中心的な役割を果たす獲得免疫の誘導においても重要な役割を果たしている.これまで,T細胞自身もTLRを発現していることが明らかになっているが,T細胞の機能におけるTLRの役割はいまだ不明な点が多く残されている.本研究では,T細胞受容体を介したT細胞の活性化で重要な役割を果たしているSrcファミリーキナーゼのひとつであるLckに注目し,TLR2とLckのクロストークを検討した.  C57BL/6マウスのCD4陽性T細胞を抗CD3ε抗体およびTLR2のリガンドであるリポペプチドFSL-1で刺激すると,抗CD3ε抗体またはFSL-1で単独刺激したものと比べ,共刺激したものではCD4陽性T細胞の増殖が相乗的に増加した.ヒト胎児腎細胞由来のHEK293細胞にTLR2遺伝子とLck野生型遺伝子をそれぞれ単独,あるいは同時に導入し,NF-κBの活性化を調べた.その結果,予想に反して,TLR2遺伝子を単独導入したものと比較し,TLR2遺伝子とLck野生型遺伝子を同時に導入したものでは,FSL-1刺激によるNF-κBの活性化が有意に抑制されることがわかった.さらに,Lckの各種欠失変異体(キナーゼ不活型点変異体K273R,Y394F,恒常的活性化型点変異体Y505F)を作製し,これらの遺伝子をHEK293細胞に導入し,FSL-1刺激によるNF-κBの活性化を調べたところ,キナーゼ活性がLckによるTLR2シグナルの抑制に部分的に関与するという結果を得た.また,TLR2とLckとの会合が免疫沈降法で確認された.  以上の結果から,TCRを介したT細胞の活性化に関与するLckがTLR2と会合し,下流のシグナルを負に制御することが示唆された.

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ