ヒノキ林における細根量の季節変動

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タイトル別名
  • Seasonal Changes in Fine Root Biomass in a Chamaecyparis obtusa Endl. Forest
  • ヒノキリン ニ オケル サイコンリョウ ノ キセツ ヘンドウ

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抄録

滋賀県大津市の奥比叡に位置する40年生のヒノキ人工林において1989年4月から11月まで土壌コアー法を用いて細根の調査を行った。水洗により選別した根の現存量の65-75%を1mm以下の微細根が占め, 残り25-35%を1-3mmの細根が占めていた。微細根は形態, 物理性をもとに, 生きた微細根と枯死した微細根に区別した。本調査地においてヒノキの微細根, 細根は, 林内において比較的均一に分布しており, さらに垂直分布の検討から細根, 微細根の現存量の95%以上が土壌の20cmまでに分布することが示された。分布様式の検討から, 今回用いた土壌コアー法が細根, 微細根の現存量推定法として適切であることが示された。微細根と細根の現存量は6月に最大の3. 9t/ha, 11月に最低の2. 7t/haと変動し, 現存量の平均は3. 4t/haであった。細根の現存量は, 4月の0, 83t/haから6月の1. 31t/haと変化したが, 明瞭な季節変化を示さなかった。微細根の現存量は, 2. 0-3. 0t/haと変動し, その平均値は2. 5t/haであった。生きた微細根は4月に2. 8t/haと10月に1. 9t/haに現存量のピークを示した。一方, 枯死した微細根は4月から夏に向けて増加した。従って, 微細根, 細根現存量の季節変化は, 微細根の発生と枯死の季節変化により説明された。今回の調査において推定された細根, 微細根の現存量の季節変化から, 微細根, 細根の年間の生産量を1. 32t/haと推定した。本調査地における40年生のヒノキ人工林の細根, 微細根の現存量は, これまで北米を中心として針葉樹林について推定されている現存量, 生産量に較べてほぼ半分程度と低い値を示した。こうした低い現存量, 生産量は, この林分が立地条件のよい適潤性の褐色森林土の立地を反映していることが示唆された。

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