縮減する社会―子どもが減るとなぜ悪いか
抄録
「子どもが減って何が悪いか?」(赤川2005)という問題提起に対し,人口社会学的視点から答えることが本研究のテーマである.このためドイツのカウフマン(Kaufmann, F. X.)が提起した人口学的扶養負荷(就業年齢人口が担う高齢者と子どもの扶養負担)と「世代間の公平」を巡る議論に登場する指標と算式を用い,総務省統計局の日本長期統計総覧と国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計などのデータをもとに,日本における長寿化と少子化がこの負荷に与えた歴史的変化と将来見通しを明らかにした.主な知見は以下の通りである. ・長寿化の影響だけを考慮した扶養負荷は1950年の0.89人(就業人口1人あたり)から2010年現在の1.13人を経て,2055年には1.22人まで上昇する. ・これに対し実際の扶養負荷は少子化(出生力水準)の影響を受け,1950年の1.14人から1980年代の0.77人まで低下,2010年でも0.95人となお低い水準にあるが,今後急速に上昇し2030年には長寿化の影響範囲を越え,2055年には1.47人まで上昇する. ・純再生産率が1を切る(現役世代が再生産しない)状況が続くと扶養負荷が急激に上昇する.つまり再生産を果たさない世代は次世代の将来に過大な扶養負荷をもたらすことになり,世代間の公平や連帯の基盤が失われ,社会システムの持続可能性が危機に瀕する.
収録刊行物
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- 札幌市立大学研究論文集
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札幌市立大学研究論文集 6 (1), 113-120, 2012-03-31
札幌市立大学
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050001201669443712
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- NII論文ID
- 120005593266
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- ISSN
- 18819427
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles
- KAKEN