肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法施行直後に腫瘍破裂を来した一例

DOI Web Site Web Site Web Site 参考文献14件 オープンアクセス
  • 福井 悠美
    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学分野(内科学第一)
  • 佐伯 一成
    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学分野(内科学第一)
  • 花園 忠相
    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学分野(内科学第一)
  • 田邉 規和
    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学分野(内科学第一)
  • 浦田 洋平
    長門総合病院 内科
  • 日髙 勲
    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学分野(内科学第一)
  • 寺井 崇二
    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学分野(内科学第一)
  • 坂井田 功
    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学分野(内科学第一)

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Ruptured Hepatocellular Carcinoma Immediately after Transcatheter Arterial Chemoembolization
  • カンサイボウガン ニ タイスル カンドウミャク カガク ソクセン リョウホウ シコウ チョクゴ ニ シュヨウ ハレツ オ キタシタ イチレイ
  • 症例報告 肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法施行直後に腫瘍破裂を来した一例
  • ショウレイ ホウコク カン サイボウ ガン ニ タイスル カン ドウミャク カガク ソクセン リョウホウ シコウ チョクゴ ニ シュヨウ ハレツ オ キタシタ イチレイ

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抄録

肝細胞癌(HCC;hepatocellular carcinoma)の自然破裂はしばしば遭遇する病態である.しかし,肝動脈化学塞栓療法(TACE;transcatheter arterial chemoembolization)施行直後に破裂を来した症例の報告は比較的まれであり,今回,HCCに対しTACE施行直後に破裂を来した一例を経験したので報告する.患者は73歳男性,背景肝は慢性肝障害(非B非C)であり,20XX年5月に肝S7のHCCに対して,開胸開腹S7亜区域切除術を施行した.翌年5月,肝両葉にHCCの再発を認め,リピオドール併用肝動脈化学療法(Lip-TAI;lipiodol - transcatheter arterial infusion)を施行したが,肝S2の腫瘍はリピオドール貯留不良であった.7月には同S2病変は径38×20mm大に増大し,肝表面に突出していた.同病変に対してTACEを施行したが,治療終了4時間後に心窩部痛が出現し,収縮期血圧は60mmHg台に低下した.細胞外液負荷にて速やかに収縮期血圧90mmHg台まで上昇したため経過観察としたが,徐々に貧血が進行した(術前Hb 11g/dl → 術後Hb 6.2g/dl).術後4日目の腹部エコーおよび腹部造影CTで,TACE施行後の肝S2のHCCの周囲に血腫を認めた.明らかな造影剤の漏出は認めなかったが,HCC破裂による貧血進行と判断し,同日再出血予防のため肝動脈塞栓療法(TAE;transcatheter arterial embolization)を施行した.TAE施行後は再出血なく経過した.本症例では,HCCが増大傾向にあり,肝表面に突出していたことから,元々HCC破裂の可能性も考慮すべきであった.加えて,TAE施行時にTACE後の肝S2HCCに血流の残存を認め,塞栓が不十分であったことが判明した.以上のことから,TACEに伴う様々な刺激,血流残存などの要因によりHCC破裂を来したことが推察された.したがって,本症例のように肝表面に局在するHCCに対してTACEを施行する際には,TACE後破裂のリスクも想定して,慎重かつ確実に肝動脈を塞栓し,厳重な経過観察をしていくことが重要と考えられる.

収録刊行物

  • 山口医学

    山口医学 64 (1), 35-40, 2015

    山口大学医学会

参考文献 (14)*注記

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