内視鏡外科手術におけるBi-Hand Coordination技術評価系に関する研究

DOI HANDLE Web Site PubMed オープンアクセス
  • 植村 宗則
    九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座
  • 坂田 一仁
    九州大学大学院医学系学府臓器機能医学専攻外科学講座
  • 富川 盛雅
    九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座
  • 長尾 吉泰
    九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座
  • 大内田 研宙
    九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座
  • 家入 里志
    九州大学病院先端医工学診療部
  • 赤星 朋比古
    九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座 : 准教授
  • 橋爪 誠
    九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座 : 教授 | 九州大学病院先端医工学診療部

書誌事項

タイトル別名
  • Novel Surgical Skill Evaluation with Reference to Two-handed Coordination

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抄録

1.はじめに・内視鏡外科手術は従来の開腹手術に比べ切開創が小さく術後回復が早いため,患者に対して利点が多い.他方,術具の操作性が低く,術者にとって負担が大きい上に,高度な技術が要求される.このことから,内視鏡外科手術における手術トレーニングの必要性が認識されつつある.最も一般的なトレーニング方法としてボックストレーナーを用いたトレーニングが挙げられるが,手術手技の客観的な評価系が確立されていないため,指導者が付き添っていない場合,独善的なトレーニングになってしまうことが懸念される.今回我々はBi-Hand Coordination 技術(BHC 技術)が内視鏡外科手術を安全かつ効率的に行う上で重要であることに注目し,それ客観的評価システムを考案したので報告する.2.手法・2.1 対象・コントロール群として内視鏡外科手術経験数500 例以上の医師7 名(Expert 群)と対照群の内視鏡外科手術未経験の医学部生20 名(Novice 群)を被験者とした. 2.2 技術評価モデル・BHC 技術を評価するために,滑りやすい台座上にそれぞれ異なる方向に開閉するジッパーを設置したトレーニングモデルを用いた評価タスクを考案した.モデルと鉗子先端は磁気センサを備え,タスク中のそれぞれの軌跡を計測することが出来る. 2.3 実験方法・初めに,被験者はジッパーの操作を行わずジッパーの上を決められた順番通りになぞる(task1).次に,開いているジッパーを順次閉じていく(task2).task1,task2 とも開始から完遂までの時間および台座と鉗子の軌跡をそれぞれ計測した. 2.4 評価方法および評価関数・第1 の評価として両群間におけるtask2の鉗子先端および台座の移動距離,タスクを完遂するまでの時間を比較した.第2の評価として,task1 における鉗子先端の軌跡とtask2 における鉗子先端の軌跡の差分dI とtask2 における台座の軌跡DS の相関関係から回帰直線を算出し,Expert 群における回帰直線を基準に評価タスク結果を点数化した.評価スコアSは技術点S_I≦50,時間点としてS_T≦50合計100点満点とした.技術点S_FはExpert 群における最小dI をとる相関関数上の点R から切片までの距離l_Rと任付スコア対象の点P から相関関数と垂直に交わる点から切片までの距l_Pを用い,S_I=50l_R/l_Pと定義した.また時間点S_TはExpert 群における最速タイムT_Eと任意の完遂時間T_AよりS_T=50T_E/T_Aとした.統計解析にはt検定をそれぞれ用いた. 3.結果・Expert 群はNovice 群に比べ,鉗子先端の移動距離,台座の移動距離が有意に小さく,タスクを有意に早く完遂することができた.task1 における鉗子先端の軌跡とtask2 における鉗子先端の軌跡の差分とtask2 における台座の軌跡の相関関係を比較したところ両群間に相関が認めたが,Expert 群はより強い関係を示した評価タスク結果を点数化するためのExpert群における回帰直線は,相関係数0.40(p <0.01),切片-0.60,決定係数0.92(p < 0.01)であった.評価スコアは,Expert 群61.1 ±21.9,Novice 群40.3 ± 15.7 でありExpert 群は有意にNovice 群より高得点であった.4.むすび・評価システムは内視鏡外科手術におけるBHC 技術の客観的評価系になりうると考えられた.

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