<原著>IASLC/ATS/ERS分類に基づいた肺腺癌組織亜型の分子生物学的特徴―既知の予後予測マーカーとの関連―

この論文をさがす

抄録

[抄録]肺腺癌におけるIASLC/ATS/ERS分類が2011年に発表され, その予後予測因子としての役割や分子病理学的特徴が報告されつつある. 肺腺癌においてはこれまでも上皮間葉転換マーカーや癌幹細胞関連マーカーなどが予後予測因子として報告されているが, IASLC/ATS/ERS分類とこれらの分子マーカーとの関連は不明である. 2007-2009年の原発性肺腺癌切除例161名を対象とし, IASLC/ATS/ERS分類と上記分子マーカーとの関連を検討した. 患者の内訳は, 男性74名(46%), 年齢中央値68歳, 喫煙者78名(52%), CEA高値54名(34%), 病理病期 I : 111名(69%), II : 25名(16%), III : 23名(14%), IV : 2名(1%)であった. 病理学的には, 微小浸潤癌1名, 浸潤性粘液産生性腺癌9名, 浸潤腺癌151名であった. 浸潤腺癌は既報に準じてlow grade(lepidic/papillary/acinar)129名とhigh grade(micropapillary/solid)22名に分類した. 浸潤性粘液産生性腺癌と浸潤腺癌との間に臨床背景の差は無かったが, 免疫組織化学染色では前者で癌幹細胞関連マーカーの発現率が有意に高かった. 浸潤腺癌においては, high gradeの症例で若年, 喫煙者, CEA高値例, 進行例が有意に多かった. またhigh grade症例ではMib-1 index高値例, TTF-1陰性例, vimentin発現例, E-cadherin発現低下例, P-glycoprotein発現例の割合が有意に多かった. 本研究においてIASLC/ATS/ERS分類による組織形態と様々な分子マーカーとの関連を認めた.

Departmental Bulletin Paper

application/pdf

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ