コミュニケーション能力仮説に基づいた大学医学英語教材開発の分析

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  • Analysing Medical English Materials Development at a University Using a Communicative Competence Model

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抄録

小論では Celce-Murcia, Dornyei and Thurrell’s (1995) の5つのコミュニケーション能力仮説を援用した医学英語教材の開発を議論することとする。その際,この5つに新たに「批判的能力 (critical competence)」と「専門分野能力 (field competence)」を加えることとした。本論は医学目的の英語 (EMP) に焦点を当てるので,批判的能力は専門分野能力の一部として捉えることとした。Davies (2015) では,「談話能力 (discourse competence)」と専門分野能力は,これらの二つの能力に内在する「方略的能力 (strategic competence)」「語用論能力 (actional competence)」「社会言語的能力 (sociocultural competence)」「言語学的能力 (linguistic competence)」を統合するものと考えられた。 本論は,国立大学での医学生を対象とした語彙リスト,コーパス,教授教材開発プロジェクトの一部であり,プロジェクトの概要についてはFraser, Davies & Tatsukawa (2015) で既に報告済みである。小論は医学部3 年生を対象としたコースの計画・立案・教授の過程で築き上げた概念的思考をまとめようとするケース・スタディである。具体的には,本コースのために特別に開発した医学英語教材を分析する。 教材開発の過程を振り返ってみると,専門分野能力(この場合は医学的知見)と談話能力との関係性を考えることが重要であった。医療職業人との情報・意見交換を通しての専門分野能力や参考書やウェブページ・サイト情報を拠り所としたことは言うまでもない。また,Widdowson (1978) の平易な説明を参考にして談話能力への吟味を分析し,言語学的能力は語彙タスクを用いて分析した。最後に,教材の立案に際して,語用論的能力や社会言語学的知見が十分に盛り込まれているかを検討した。学生は初期の専門教育においてはそのほとんどが教室内でなされているので,教材ではほんの少ししかこれらの2つの能力が育まれない。また,これらの能力の十分な伸長はその後の教材や授業(課程)で育まれる必要があろう。

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