特別支援学校用教科書『くらしに役立つ 社会』の分析(Ⅳ) : 研究総括 : 学習困難の研究(5)

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タイトル別名
  • An Analysis of the Textbook for Special Needs Schools “Useful for Everyday living” (IV) : Research Summary and Discussion : A Study of Learning Difficulties Part 5
  • 特別支援学校用教科書『くらしに役立つ 社会』の分析(4)研究総括 : 学習困難の研究(5)
  • トクベツ シエン ガッコウヨウ キョウカショ 『 クラシ ニ ヤクダツ シャカイ 』 ノ ブンセキ(4)ケンキュウ ソウカツ : ガクシュウ コンナン ノ ケンキュウ(5)

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抄録

本研究の意図することは,“誰もがわかる,誰もが学ぶことができる”という本来の教育の理念を取り戻すことで,特別支援教育と教科教育の間に作られていた溝を埋めること,また,これらの教育相互において本来教育が持っている理念を実現することである。そして,それによって学校教育総体を新たに創造することを目指すことである。本研究は,学習困難の概念を用い,社会科教育(の教授や学習)において妨げていることを手がかりに,理念を実現する状態を作りだすことを追究しようとするものである。 第1稿で,学習困難を生み出す要因を仮説として提出し,その妥当性を特別支援学校・小学校・中学校社会科学習指導要領および“特別支援学校”用教科書と“通常”学校用社会科教科書を比較することによって検討した。また,第2稿では特別支援学校,通常学校双方の学習指導要領と教科書の全体比較と地理的内容を,第3稿で歴史的内容を,第4稿で公民的内容を比較考察した。第5稿の本稿では,これまでの研究を総括し,研究の目的,仮説,その結果を総括・考察し,仮説に対する結論を提示した。 結論としては,①特別支援学校用社会科教科書は教育や社会科の考えにもとづき,学問よりも生活との関連,生徒が社会において行き抜くために役立つこと,生徒と社会との関わりを内容選択・配列,また教授・学習の重点として採用し,②学習困難を社会(地理,歴史,公民)の学習に対する生徒の困難と考え,③とりわけ,社会生活との関連を重視し,学習困難を極力生みださない配慮をしていることを示した。これらの配慮を,4つの仮説との関連では,情報処理の容易性,情報の特定的な見えへの限定という決断性,動き,動作,行為を伴う行為随伴性によって学習困難を乗り切り,社会の学習が社会との関わりとして成果を生み出すものとして設計している,というものであった。この結論から引き出せることは,特別支援学校用社会科教科書は社会の学習に関して,社会生活との関わりによって従来の通常学校用社会科教科書が含み持つ社会の学習において生ずる学習困難を避け,一人ひとりの生徒が学び取るものを確保している,ということである。

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