『レディ・イヴ』における恋愛バトルの特異性 : 無垢なアダムと堕ちたイヴの闘い

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タイトル別名
  • The Uniqueness of a Battle of Sexes in The Lady Eve : A battle between innocent Adam and fallen Eve
  • 『 レディ ・ イヴ 』 ニ オケル レンアイ バトル ノ トクイセイ : ムク ナ アダム ト ダチタ イヴ ノ タタカイ

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抄録

本稿は, プレストン・スタージェス監督・脚本によるスクリューボール・コメディの代表作『レディ・イヴ』(The Lady Eve, 1941)を取り上げ, その独自性とアメリカ映画史における重要性を明らかにする, 本作は, 主演俳優(ヘンリー・フォンダとバーバラ・スタンウィック)のスター・ペルソナへの自己誉及性を伴った, 「無垢なアダム」としてのヒーローと, 「堕ちたイヴ」としてのヒロインの問で繰り広げられる恋愛バトルを描く. 無垢に固執するヒーローは, ヒロインに対する絶対的な優位性を保持し, 自身の理想とする「無垢なイヴ」であることを彼女に強いる. それは, 彼女のアイデンティティの分裂と増殖, 反復構造を伴った終わりなき恋愛バトルをもたらす, この特異性は, ジャンルが衰退に向かうにつれてより極端な形で他のスタージェス作品に引き継がれる. 『殺人幻想曲』(Unfaithfully Yours, 1948)のヒロインは夫に殺される可能性さえあり, 恋愛バトルの幸福な帰結となるべき結婚生活は恐ろしいものとなるのである. スタージェスは, 1940-50年代に隆盛したフィルム・ノワールにも通じる特異性を備えた恋愛バトルを描くことで, スクリューボール・コメディを総括してみせたといえる.

収録刊行物

  • 人間・環境学

    人間・環境学 24 57-68, 2015-12-20

    京都大学大学院人間・環境学研究科

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