近現代ドイツにおける国家と憲法の相剋関係 : それと相連関する憲法・国家概念の変容過程を中心とする一考察

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  • A Study on the Transformation of the Constitution- and State-Concept correlated with the Liberal Democratization in Modern Germany
  • キンゲンダイ ドイツ ニ オケル コッカ ト ケンポウ ノ ソウコク カンケイ : ソレ ト ソウ レンカン スル ケンポウ ・ コッカ ガイネン ノ ヘンヨウ カテイ オ チュウシン ト スル イチ コウサツ

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抄録

論文

グローバル化の始まりと共に「国家の退場」が叫ばれ、それと関連して政治分析における国家概念の有意性も失われて行った。こうした傾向は日本にも顕著に見られたが、西独はやや事情が異なっていた。国家概念の有意性の喪失は勿論グローバル化との関係も一部見られるが、主として西独の西欧的な自由民主政体制への転換に起因するところが大きいと見られる。19世紀末から20世紀前半期にかけてドイツでは国家学が政治研究の支配的な学問として君臨し、国家概念が有意性を有していた。それは、「人権」を重視する西欧的な政治学に対する、「行為する主体」としての国家を至上視する後発近代国家のドイツ的な自己主張の表れであったとも見られる。「人権」重視の近代憲法理念とドイツ的国家との戦い、つまり近代憲法理念と国家の相剋関係は、ナチ国家の消滅まで続いたドイツ近現代政治史を貫く赤い糸であった。 この両者の関係は憲法概念と国家概念の変容過程において反映されていた。換言するなら、憲法の挑戦を受けた国家側の対応の変化に応じて憲法概念はドイツでは改変され、それと相連関して国家の多様な側面も顕在化した。この変化はまた国家概念の多様な定義となって表れた。それは、国家学が政治分析において国家概念の有意性を高める試みでもあったと見られる。本稿では、憲法概念と国家概念の変容過程を追跡することによって、西独でボン基本法体制確立と共に、西欧的な近代憲法理念によるドイツ的国家への「浸透性」の拡大とナチ国家の敗北による西欧化の結果として、ドイツのレヴァイアサンの死を迎えた過程を明らかにした。それと共に、ドイツでも国家概念の優位性が失われ、それと共にドイツ国家学の影響力も衰退した。こうして、西欧化された世界では、政治研究においては、国家概念よりも権力概念や政治過程論、政治システム論の方が有意性をより多く有するようになった経緯をも明らかにした。

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