脳神経倫理学の嚆矢としてのParfit論

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書誌事項

タイトル別名
  • Derek Parfit: The whistle for starting neuroethics

抄録

Parfitの「理由と人格」(1984)において分離脳研究の思考実験で著名な第12章を中心に、Parfitとその後に発展した脳神経倫理学、特に倫理の神経科学(neuroscience of ethics)との関係を検討した。また、分離脳研究を発展させたSperryとGazzanigaを中心に認知神経科学の発展の歴史を振り返ることで、Parfit が神経科学に注目した理由を探った。しかし彼の理論にとって脳の実際の物理的構造はほとんど重要性を持たないため、思考実験自体にリアリティーが欠け、分離脳研究の解釈にも問題点が見られた。また、自らはオーソドックスな倫理学のフィールドから足を踏み出すことがなく、脳神経倫理学という新たなフィールドを開拓しなかったことは、Parfitの限界といえる。それでも、脳神経倫理学の夜明け前に脳の構造と倫理学的課題を(無自覚的ではあっても)結びつけ、結果的に脳の構造に関心を抱く人々に倫理学的課題がごく身近にあることを理解させた彼の功績は、脳神経倫理学の嚆矢と呼ぶべきである。

収録刊行物

  • 応用倫理

    応用倫理 10 17-25, 2017-11-30

    北海道大学大学院文学研究科応用倫理研究教育センター

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390572174748413184
  • NII論文ID
    120006380375
  • DOI
    10.14943/ouyourin.10.17
  • HANDLE
    2115/68204
  • ISSN
    18830110
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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