小学校就学前教育における図書教材の実態に関する調査的研究 ― 弘前大学教育学部附属幼稚園の場合 ―

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  • Research on the Current Status of Library Materials in Pre-school Education: the Case Study of the Kindergarten Attached to the Faculty ofEducation, Hirosaki University

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抄録

本稿では小学校就学前教育における図書教材に視点をあて,その実態調査を行うとともに,図書教材に関わる幼保小連携の在り方について考察した。弘前大学教育学部附属幼稚園の図書教材の実態として,主に3点のことが言える。1点目として図書教材の総数からは,保育室全体の傾向としてお話や科学的読み物,雑誌が多いが,図書コーナーでは圧倒的にお話が多い。2点目として本棚に配置された表紙が見える図書教材の傾向として,各保育室には幼児の実態や発達を踏まえた図書教材が並べられている。特に5歳児保育室では,小学校入学を見据えた図書教材も見られる。3点目として小学校低学年の読みの学習で教材文として扱うお話の半分近くが,附属幼稚園の図書教材として配置されている。そのお話の中から「おおきなかぶ」について附属幼稚園の幼児に聞き取り調査を行ったところ,「知っている」と答えた幼児は全体の約半数に及んだ。このことは他園の幼児においても小学校で学習する時,「おおきなかぶ」は「知っているお話」の可能性がある。確かに低学年読みの学習において,子どもの学習環境の変化,また「話しことば」から「書きことば」といった学ぶ言語形態の変化に伴う戸惑いなどから,「知っているお話」は子どもに心理的安心感をもたせる可能性がある。一方,これまで短時間で「ストーリー(出来事)」を楽しんできた就学時前教育と,数時間かけて言葉に立ち止まったり言葉の使い分けに気付いたりなど「言葉」そのものに着目する小学校読みの学習との間には,「知っているお話」がゆえに同じお話の扱いに対するギャップがある。そのギャップをどのように埋めていくかの吟味が小学校教育,小学校就学時前教育の双方にとって必要となるとともに,幼保小連携の在り方を考える一つの視点ともなる。

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