チャの花器形態の地理的変異と数値分類

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on Geographical Diversity of Floral Morphology of Tea Plant (Camellia sinensis (L.) O.KUNTZE) using the Method of Numerical Taxonomy
  • チャ ノ カキ ケイタイ ノ チリテキ ヘンイ ト スウチ ブンルイ

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抄録

野菜茶試(枕崎)で保存している,チャの種内の各品種群に属する栄養系品種・系統(試験と茶樹集団(試験2)の花器形態を調査して,その変異を明らかにし,このデータを用いて数値分類を行い,種内分類と花器形態との関係を検討した。<BR>試験1:来歴を異にする品種・系統103(日本在来種44,中国導入種14,アッサム種14,アッサム雑種20,その他の系統11)を供試して,花径の大小・花弁数・雄ずいと雌ずいの形質・子房の毛等の13形質を選んでそれぞれの変異を明らかにし,これらの形質の中から11形質を取り上げて主成分分析と判別分析を行った。品種・系統によって顕著な差異が認められたのは,雌ずい抽出度,分岐点の深さ,花柱のくびれの有無,雄ずい数,子房の毛の有無と多少であった。日本在来種の品種・系統の多くは雌ずい抽出度が中位のM型かあるいは低いS型で,これと対照的に中国導入種のほとんどが雌ずいが雄ずいよりも高いL型で花柱のくびれが明瞭に認められた。アッサム種の多くはL型であるが一部にM型もみられ,また,子房に無毛あるいは毛の少ない系統が確かめられた。主成分分析では,第1成分は雌ずいの形態と,第2成分は花の大きさに関係する成分と考えられた。判別分析で,日本在来種・中国導入種・アッサム種の3品種群の分類距離は,それぞれ大きく,一方アッサム雑種品種群と中国導入種あるいはアッサム種との間の分類学的距離は近いことが示された。<BR>試験2:42の茶樹集団(日本在来種;17,中国導入種;10,アッサム種;11,その他;4)の1,356個体について花器形態6形質を調査し,集団内,日本在来種・中国導入種・アッサム種等のグループ内の形質の変異を確かめた。その結果,試験1の栄養系品種で認められたのと同様に,雌ずい抽出度と花柱のくびれの有無について,日本在来種と中国導入種およびアッサム種との間には顕著な差異のあることがわかった。L型で同時に花柱のくびれの明瞭な雌ずいを持つ個体が,中国導入種とアッサム種に多く,日本在来種には少なかった。また,子房無毛ないしは少ない個体がアッサム種に多く,日本在来種にはみられなかった。ここで取り上げたいずれの形質も,アッサム種のグループ内の変異の方が中国導入種や日本在来種の変異よりも大きかった。この事実は,チャの原産地がここで取り上げたアッサム種の分布域により近いことを示唆するものと考えた。この6形質の集団平均値に基づいた主成分分析の結果,第1成分は試験1と同様の傾向を示した。次いで,クラスター分析を行い,分類距離による加重変量法が最も明瞭に,日本在来種・中国導入種およびアッサム種を分けることを確かめた。従来からの分類で中国導入種としていた韓国の2集団の内の1種は日本在来種のグループに入ること,タイワンヤマチャはアッサム種に,ベトナム産のシャンはアッサム雑種に分類されやや特異な位置にあること等が明らかにされた。<BR>以上の結果から,チャの花器形態は種内分類にきわめて有用で,また花器形態を対象とした数値分類法は,今後の類縁関係の解明に新しい知見を与えるものと考えられる。

収録刊行物

  • 茶業研究報告

    茶業研究報告 1999 (87), 39-57, 1999-05-31

    Japanese Society of Tea Science and Technology

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (2)*注記

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