腫よう性大腸炎に対するか粒球・単球除去療法

抄録

潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)は何れも、腸粘膜の潰瘍を主とする炎症性腸疾患である。UCは主として大腸粘膜が侵され、しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症性腸疾患であり、下痢、粘血、血便、腹痛等を主な臨床症状とする。CDはUCとは異なり、炎症性病変は小腸や大腸が好発部位であるが、口腔から肛門に至る消化管のあらゆる部位が繊維化し潰瘍を伴う肉芽腫性炎症性腸疾患である。腹痛、下痢・軟便、発熱、体重減少を主症状とし、しばしば狭窄・閉塞・瘻孔等の重篤な合併症を伴う。これら炎症性腸疾患は、慢性持続型や再燃緩解型の占める割合が大きく、罹患率も年々増加傾向にあり有病率も級数的に増加していることより、新しい治療法の開発が急がれていた。UCに関しては、白血球除去療法が兵庫医科大学の下山教授らを中心に1992年より厚生省の班研究として今日まで研究がなされており、その成果の一つが本年4月より保険治療が可能となった顆粒球除去療法(アダカラム)である。アダカラムによる治療効果は、顆粒球・単球を選択的に吸着除去すると同時に、顆粒球の血管外遊出能の抑制、あるいは単球のサイトカイン産生の抑制などによるものと考えられている。<BR>本セミナーでは、熊本・高野病院の守田則―先生と浜松医大の花井洋行先生より、アダカラムを用いたUC患者の難治例を中心に自験例について報告していただく。一般的に、重症や難治のUC患者には大量のプレドニゾロン(PSL)療法がなされているが、治療当初より反応が悪い症例や初発時には有効であっても次第に治療効果が見られなくなる症例、さらにPSLを増量しても緩解導入に至らない症例、あるいはPSLの副作用症例等が問題になっている。これらの症例に対してアダカラム療法がPSLの減量効果と同時に、腸粘膜の炎症の軽減および患者のQOLの向上等の効果を示す事が期待される。また、福岡大学筑紫病院の松井敏幸先生より、CD患者にアダカラム療法を施行した自験例について報告していただく。さらに、特別発言として慶応大学の日比紀文先生より、新しい治療法である顆粒球・単球除去療法がこれら炎症性腸疾患の治療体系において、今後どのように位置付けされていくのかについて述べていただく。

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